巨人・高梨雄平投手(28)が、古巣の楽天に〝倍返し〟の活躍を見せている。楽天では開幕から二軍で、ほぼ構想外の扱いだったが、巨人にトレードされるなり10試合連続無失点で早くもセットアッパーの地位を獲得。さらにマウンドを降りたところでも思わぬ好影響を及ぼしており、巨人にはしっかり「恩返し」している。

 ここまで活躍するとは、楽天も予想していなかったのではないか。古巣では主に左打者、ワンポイント要員で起用されてきた高梨だったが、与四球率の高さとワンポイントでの起用を不要とする楽天・石井GMの方針もありトレード要員に。今季は開幕から二軍の憂き目に遭っていた。

「でも数字は残していたから、事情を知っていた選手やスタッフは高梨をふびんに思っていた。本人も『どうして二軍なんだ』という思いがあったはずだし…。だからトレードが決まったときには『活躍できる場がきっとある』と励まされ、東京へ向かったそうです」(楽天関係者)

 巨人での活躍ぶりは見事だ。7月22日の初登板以降、10試合連続で無失点中。ワンポイントどころか、終盤の1イニングを任されており、原辰徳監督(62)も打者の左右関係なしの起用について「十分、その中でいい位置づけでいてくれている」と評価している。

 宮本投手チーフコーチもしかり。当初は終盤の投手起用については、方程式を作らず臨機応変のスタイルを強調していたが、高梨の出現によって抑えを中川に固定することができた。11日から守護神・デラロサが一軍に合流予定で、ブルペン陣の層がさらに厚くなるが、今や高梨の存在は欠かせない。

 楽天への「恩返し」どころか「倍返し」となる活躍だが、巨人はさらなる〝高梨効果〟を期待している。「常に何かを考えて練習している。楽天にいたときも『この打者にはどんな変化球、配球が有効なのか』とか一人で考えて新球をマスターしたり、すぐさま実行に移す。それが時には『考えすぎてしまう』ことにもなっていたようだが、『考える力がない』と言われているウチの若手にはいい刺激になるはず」(チーム関係者)

 すでにその一端をうかがわせている。宮本コーチいわく「彼の生活を見ていたら面白いですよ。練習内容とかね。ブリッジして、そのままぐるぐる回ったりだとか。自分を持っているというか、自分のトレーニングをやっている。プロとして生きていく『道』があるんでしょうね。いい補強をしてくれたなと、球団の方には感謝していますね」。

 巨人は有望株の右腕・高田を放出したが、現在の活躍に加え、若手への好影響を考えれば、高梨で受けた恩恵は巨人にとっても〝倍返し〟となったに違いない。