【復刻!ノムさんのボヤ記⑥】今年2月11日に亡くなった、野村克也さんに感謝と敬意を込め、楽天監督最終年となった、2009年シーズンのボヤキを一挙公開! ノムさんが受賞した、当時「ホームラン王より取るのが難しい」と言われたというある賞とは…。1年間完全密着で抽出した珠玉のボヤキの数々を、当時を懐かしみながらお楽しみください。

 ◆2009年 5月5日 西武戦(西武ドーム)試合前

 米田(当時の球団代表)から「監督、今日はボクの誕生日です」って言われたけど、「それがどうした?」って言ってやったよ。

(不調のセギノールを見ながら)八分くらいの力で打てば飛んで行っちゃうのに、バカほど力む。バッティングは下(下半身)だよ。力仕事は何でも下。重いものを持ち上げるのも下を使うだろ。原理は簡単なんだから、覚えられないのがアホ。まあ若い時は(上半身のパワーだと)勘違いしがちだがな。

(試合は西武に7―3で勝利。一軍未経験のルーキー・井坂を先発させるギャンブル采配が見事的中)

 今日初めて見るんだよ。二軍戦で投げているのも見たことがない。いい加減な監督だよ。なぜ抜擢したかって? 他に候補がいないから。長身(186センチ)が気に入ったんや。ピッチャーらしい体形。二軍からの推薦はなかったが、「負けてもいいから投げさせろ」ってな。でもまさか勝つとは…。今年は何か起きるな。天変地異とかな。

 ◆5月6日 西武戦 試合前

 試合後、千葉に移動か。オレは(東京の)家に帰るけどな。明日のオフは京都で講演が入っているんだよ。マネジャー(沙知代夫人)がマネジャーだから休ませてくれん。(元代議士の)野中広務さん直々の頼みだからな。京都は阪神ファンも多いし、阪神批判でもしてくるか。

(当時評論家だった栗山英樹氏があいさつに訪れると)

 スーパースター、後でサインしてくれるか。おい、テレビ朝日の○○さんにオレの(解説者の)席を空けておくよう言っといてくれ。オレはテレ朝の大功労者。「野村スコープ」でテレ朝の社長賞をもらったんだよ。誰かが言ってたけど「ホームラン王取るより難しい」らしいな。当時(社長賞は)ドラえもんと誰かに次いで3人目だった。

(試合は西武に6―3で勝利。長谷部は8回途中1失点)

 今日の長谷部は手放しでは褒められない。ぶん殴りたいよ。5点もらって何やってんだ。5月6日は「フルハウスデー」と呼んで下さい。フルハウス(カウント3―2)ばっかりや。楽天名物ができたな。

 ◆5月8日 ロッテ戦(千葉マリン) 試合前

 新型インフルエンザは60代以上はかからないのか? 実は気になっていたんだ。ウイルスも若いのがいいのかな。

(試合は3―4で敗戦。セカンドに起用した内村賢介がエラー)

 所詮、二軍の選手だもん。小坂(誠)でいくか、内村でいくか非常に悩んだんだけどな。若い子(23歳)だし、将来のために使おうかと。オレの悪い癖、「情」が出たな。昔からオレのかける情は相手に伝わらないんだよな。

 ◆5月9日 ロッテ戦 試合前

 目が肥えてきたのか、メジャーも大したことないな。日本の選手でも十分やっていけるよ。ワールド・シリーズを日本でやらないかな。アジアチャンピオンと対決という形で。まあ、向こうが嫌がるか。それにしても、テレビでNHKの野球解説を見ていたけど、ひどいな。3打席ノーヒットで4打席目が回ってきた打者に「このへんで1本が欲しいですね」だと。誰でも言えるぞ。昔はNHKの解説といえば、もっと品格があった。小西得郎さんに始まり、鶴岡さん、川上さん…とな。今は深みがないな。

 ◆5月10日 ロッテ戦 試合前

 しかし、楽天はこの面子でよくこの位置(首位)にいるよな。昨日、巨人戦を見たけど、うらやましかったもん。ラミレス、小笠原、李承燁(イ・スンヨプ)だろ。でも監督はつまらなくないのかな。何もやらなくてもいいだろ、あのメンバーだと。逆に何かやりたくなるのかな。

(試合はロッテに0―6で完敗)

 高校生みたいな投手(唐川)にひねられて…プロのプライドはないのか! ワシらのころはあったがな。必死になって打ったもんだよ。しかし、疲れるな。監督って因果な商売だよな。もう健康だったらいいか、という心境になってくるよ。

〈毎週日曜「東スポWeb」掲載〉