巨人・坂本が本紙専属評論家・伊原氏に漏らした不安

2020年02月25日 16時30分

伊原氏(左)に珍しく弱音を漏らした坂本

【伊原春樹 新鬼の手帳】勇人よ、弱音を吐くんじゃない! 今季2000安打の大台を射程に捉える巨人・坂本勇人内野手(31)を本紙専属評論家の伊原春樹氏が沖縄・那覇キャンプで直撃。すると普段はポジティブなキャプテンが珍しく不安を漏らした。それでも坂本にとっての“球界の父親”を自任する伊原氏は弱気を許さない。NPB史上2人目の3000安打到達へ“愛息”の背中を力強く押した。

 笑顔を拝みに来たつもりだった。「やあ、勇人! 年明けからインフルエンザのA型とB型にかかったんだって? じゃあ、次は“3冠王”を狙って…」。私が冗談交じりに声をかけると「伊原さん、それだけは勘弁してください!」。明るい返事に安心したのだが…。

 勇人は名球会入りの2000安打まで、残り116本に迫っている。だが私はその程度で収まる打者ではないと常々思っている。ゆえにこの日も「2000本で満足するんじゃないぞ。お前さんなら3000本打てるから。期待しているよ」とゲキを飛ばした。

 当然、いつものように「頑張ります!」と勢いよく返してくるものと予想していたら「いや、無理だと思います」。前向きな彼が下を向くのは珍しい。私が「なぜそう考えるんだ?」と聞き返すと「このままだと選手を続けられるのはあと5年ぐらい。(3000本は)毎年200本打たないと届きませんよ。だから無理ですよ」という。

 口にしたのは肉体の変化だ。私が訪れた日は中日と練習試合を行い、勇人は「2番・遊撃」で先発出場していた。「伊原さんも試合をご覧になったでしょう? 二遊間を抜けていった打球がありましたが、僕の中では『捕れる』という感覚があったんです。でも、追いつけなかった。やっぱり30歳を過ぎて足が弱ってきているんだと思います」。自分自身の体の反応にショックを受けている様子だった。

 勇人は野球に対してとことん真面目な性格だ。だから足腰が弱ってきたと感じれば、そこを鍛え直そうとする。取材の日も試合を途中交代すると休む間もなくサブグラウンドでノックの雨を受けていた。ただいつまでもそれではいけない。現役を長く続けるためには、そうした姿勢も見直していく必要がある。

「体の変化を感じるからといって、練習しすぎはよくないぞ。ここからのケガは選手寿命を左右する。選手時代の由伸を見ていただろう? 彼だって腰の故障がなければ軽く2000本を打てる打者だった。練習は必要だが、今までと同じようにやってはだめだ。長く現役を続けるためには、勇気を持ってペースを落とすことも必要だよ」

 私の言葉が少しは響いたのか。勇人は「なるほど…」とうなずくと「そういえば、阿部さんも数年前から自分で練習量をセーブしていましたね。僕も考えてやっていきます」。表情が和らいだので私もひと安心だ。「本当に足が動かなくなったら、最後はパ・リーグに行きなさい。指名打者で数年ぐらいやらせてもらえば必ず3000本に届く。絶対に打ってくれよ」と背中を押して那覇を後にした。

 天からの忠告か、勇人は直後に背中の違和感を発症して別メニュー調整中と聞いた。ちょうどいい休養期間だと受け止めればいい。今後は大人になった体と上手に付き合いながら、本気で夢の数字を目指してほしいと願っている。