阪神・藤浪の不調 5年前にすでに予見していた能見

2019年06月13日 11時00分

T―岡田を三振に切って取る藤浪

【楊枝秀基のワッショイ!!スポーツ見聞録】先見の明というのか。一時代を築いてきたエースには感じるものがあったのだろう。今から5年前、2014年のシーズンイン目前に現在の藤浪晋太郎(25)の不調をすでに予見していた人物がいた。5月28日に40歳を迎えた能見篤史だ。当時、クールなエースはこう話していた。

「表現としてはどうかな…良くない言い方かもしれないですけど、僕は去年より藤浪は悪くなっていると思いますよ」

 大阪桐蔭で春夏連覇を達成しドラフト1位で阪神入り。1年目の13年にいきなり10勝を挙げた藤浪に、こんなことを言う関係者は皆無だった。誰もが明るい未来を信じて疑わなかった。だが、当時の能見は冷静だった。

「1年目にプロで1年間できてしまったという余裕が悪く出て、変にプロに慣れてほしくない。ランニングだって、ブルペン投球数だって自分次第。本人がどう感じて取り組むか。30代の僕らと同じ練習でいいはずがない。未知の力を引き出さないと。今のままだと普通の投手になってしまうかもしれないですよ」

 能見の不安は杞憂にみえた。藤浪は入団から3年連続2桁勝利。若きエースは世代交代さえ予感させたが、4年目以降は7勝、3勝、5勝。7年目の今季は制球難克服のため2段モーションを取り入れフォーム修正に取り組むなど、二軍からのスタートとなった。

 そして今季初登板、今月18日のウエスタン・リーグ広島戦(由宇)では1回を三者凡退。中11日で臨んだ30日の同オリックス戦(鳴尾浜)では先発で3回を打者10人に36球、無安打1四球で無失点と好投した。そして3度目の先発登板となった11日のウエスタン・オリックス戦(オセアンBS)は実戦復帰後最長となる5回を投げ1安打8奪三振無四死球、無失点と上々の結果を残し、最速は157キロをマークした。

 オリックスは3人の右打者をスタメンで起用したが、抜け球は1球もなく計5度の対戦機会を完璧に封じるなど、課題も克服。藤浪は「全体的にバランスよく、いい感じで投げれている。普通に投げれれば、それなりの投球はできつつある。まだ数試合ですけど、手応えはあるかな、という感じです」と話した。

 日増しに復調の兆しを見せる藤浪に、平田二軍監督は「晋太郎の力からすると驚くことではないけど、段階は踏んでいっている。次はまたイニングを伸ばしてになる。一軍に推薦? まだ段階はあるけど、夏場では必ず必要になってくる」と評した。矢野監督も「数字だけでしか見てないが、結果をしっかり出した。間違いなくいい内容だと思う。一個、二個ステップアップできた。晋太郎がいいからといってすぐに上げるというものではない。ただ、いつごろなのかと逆算していけるところまではきたと思う」と期待を込めた。

 そういえば、当時の能見はこうも言っていた。「周りが力を貸してあげないと。打たれても打ち返してやってほしいし。彼を負けさせてはいけない。彼が勝てばこのチームは強くなる。もう一度優勝したいし。僕ももうええ年ですから」。苦悩する若手の復活とベテランの夢がリンクする時、05年以来のリーグVが見えてくる。