隣家に対していやがらせをしたとして、59歳の男が逮捕された。使用したのは「死ね」と書かれた紙と、シカの頭蓋骨。ストレートすぎる「死ね」という表現はともかく、シカの頭蓋骨とは意味不明ながらなんとも不気味だ。捜査関係者の口からは「呪いかもしれない…」。そこで緊急調査したところ、確かにシカの頭には呪術的な意味が込められている可能性が高そうだ。それにしても、このご時世に呪いの頭蓋骨とは――。

 千葉県迷惑防止条例違反(つきまとい行為等)の容疑で先月末、県警流山署に逮捕されたのは、流山市の自称自営業の男(59)。今年4月から9月にかけて、隣に住む女性(81)宅に向けて、自宅の窓から「死ね」と書いた紙などを見せる嫌がらせ行為を計15回行った疑いが持たれている。

 嫌がらせはいつも朝に行われた。自宅の2階の窓から出した手には「○○(=女性の名前)婆死ね」などと書かれた紙だけでなく、シカの頭蓋骨もつかまれていたという。男はほかにも女性宅の前で「まだ生きてるのか!」と暴言を吐いたり、敷地内に枯れ葉を投げ入れたり、窓に唾を吐いたりした。

「警察も4月に警告して5月はやんだが、6月にはまた再開。しつこいので逮捕した」(同署幹部)。男は容疑を認めているが、動機は不明。同幹部は「長年積み重ねた鬱憤があったようだ」と話す。それにしても「シカの骨」と「死ね」とはおどろおどろしい。「呪いじゃないかね?」とボソッと幹部はつぶやいた。

 呪術などに詳しいオカルトスポット探訪マガジン「怪処」の吉田悠軌編集長(33)は「シカの骨といえば大分県の『白鹿権現』が有名」と語る。マタギが狩ったシカの頭蓋骨を洞窟に奉納する有名なスポットだ。

「日本では、信仰や占いにシカの骨を使うのが主流。権現の骨には奉納というポジティブな意味合いがあるが、裏を返せば霊力のある動物の骨はネガティブな作用も及ぼすことがある。今回の事件にも呪いが関係していることは大いに考えられる」(吉田氏)

 長野県の諏訪大社の御頭祭(おんとうさい)もシカの頭を供物としてささげ、五穀豊穣を願う。現在は剥製の頭だが、かつては75頭ものシカを狩ってささげたことがあった。動物と骨が関係する呪物は少なくない。

 吉田氏によると「室町から江戸時代に存在した『歩き巫女』は、猿やキツネの骨の入った箱を首からぶらさげ、占いや口寄せ、呪いに使う霊力を高めていた。歩き巫女の系譜である『イタコ』も師匠から『お大事箱』という動物の骨入りの箱をもらうのです」。

 中でもおぞましいのは「犬神」という呪いだそうで「中国由来で四国に伝わるもの。生きた犬を土に埋め、首だけ出す。届かないところに餌をおき、ヨダレを垂れ流す犬の『食べたい』という念が強まったときに首を切り落とす」(吉田氏)。

 その首は恨みを持つ相手に危害を加えたり、殺すほどのパワーがあるそうだ。また、キリスト教圏やアフリカでは、ヤギの頭は悪魔崇拝や黒魔術と密接な関係がある。

 吉田氏は「生き物の頭というのは呪いに使える。今回の事件の容疑者も日本人のDNAに組み込まれた呪いの方法を知らず知らずに実践していたのかも」と語った。

 果たして、男は呪いをかけていたのか。