“女芸人マニア”として知られているお笑いコンビ「馬鹿よ貴方は」の新道竜巳が、これから“馬鹿売れ”しそうな女芸人を紹介するこの連載。今回は9年前に大ブレークし、最近また活動を再開している女性タレントにスポットを当ててみた――。

「藤原しおり」と言われてすぐに誰か分かる人はどのくらいいるでしょうか? 実はブルゾンちえみとして一世を風靡した方です。本人は現在、「芸人時代…」と言っているので、芸人は引退したという認識なのかもしれません。

 ブルゾンちえみとしては2017年1月1日、このたった1日で人生を変えました。その日は「ぐるナイ!おもしろ荘 若手にチャンスを頂戴今年も誰か売れてSP」(日本テレビ系)の放送日。それまでは全くの無名で、15年9月にワタナベエンターテインメントカレッジのバラエティタレントコースを卒業してから、あまり時間がたっていなかっただけでなく、ライブもほとんど出ていなかった。ブレーク後は自信満々の雰囲気でしたが、売れる前は自信なく活動していたそうです。

 そんな中で何かやらなければならないという思いからネットラジオのようなものをやっていて、私はそれを見させていただいていました。しゃべるのが上手で面白く、お薦めの芸人の一人でした。すると急に「『おもしろ荘』で優勝したらしいよ」という情報が放送前に飛び込んできた。いったいどんなネタかと楽しみにして見たらビックリ。3人組でネタをやっていました。

 最近はユニットとして本コンビとは別に活動する芸人が増えてきたので、普段と違う形でネタをするのも当たり前になってますが、当時は「エキストラでも雇ったのかな?」と思うほど斬新過ぎた。名前も「ブルゾンちえみwithB」。3人で活動する名前もあるんだと気付かされました。

 ネタが面白いだけじゃなく、しゃべっていることが、どこか“人間の深み”を言い続ける。たとえば「元カレのことが忘れられない? じゃあクミちゃんは味のしなくなったガムをいつまでもいつまでも噛み続けますか? 新しいガム食べたくない?」のような…。笑いよりも伝えたいことが優先的にある中で笑いも起きる。スタンダップコメディーのようなスタイルを、おもしろ荘に持ち込んできました。

 最終的には「地球上の男は何人いると思っているの? 35億。あと5000万人」というフレーズが有名になりました。数字のインパクトと端数の5000万人を分けることで、「35億」をアンダーラインを引いたように強調する。この巧みさはネットラジオでの話術が生かされたのかもしれません。

 セリフ量が少なくマネしやすいことも流行した理由です。芦田愛菜さんがマネをして話題になったこともあった。3人で活動しているのに、他の2人は「何かしゃべらないの?」というイジリもあった。「withB」と分けていることで、しゃべらない違和感が解消されていることもスキがないところです。

 ブルゾンちえみさんは17年の「R―1ぐらんぷり」決勝でネタを飛ばし、泣いてしまったこともありました。しかしそれによって逆に好感を持たれた。優勝したアキラ100%と変わらない反響がありました。普段はキャリアウーマンの冷静沈着なキャラクターで、強い女というイメージの振りが効いていた分、泣いてしまうという人間的な面が好意的に見られたのだと思います。「35億」は結局、「ユーキャン新語・流行語大賞」でトップ10入りするほど話題になりました。

 その後20年に事務所を退所して芸人活動もやめる急な方向転換。わずか5年でスッパリお笑いをやめる潔さでした。そして21年ごろから藤原しおりとしてユーチューブを始め、友達と一緒にトークを繰り広げた。これがまた面白かった! 再生数も高く順調に見えましたが、23年にはユーチューブ、ツイッター(現在のX)、インスタグラムなどをすべてやめてしまった。何もなくなったのかと思っていたら、最近また復活。動画はあまり出していませんが、生配信を時々されて元気な様子を見ることができます。今年で36歳とまだ若いので、今後の活躍も楽しみにしています。

 ☆しんどう・たつみ 1977年4月15日生まれ、千葉県出身、本名・濱島英治郎。平井“ファラオ”光と組む「馬鹿よ貴方は」として「THE MANZAI」「M―1グランプリ」で決勝進出を果たした実力派。緻密なネタ作りに定評がある一方、女芸人ナンバーワン決定戦「THE W」では、予選会場に足しげく通い、ほとんどの出場者のネタを見るほどの“女芸人マニア”。