28日に閉幕したボートレース鳴門のSG「第36回グランドチャンピオン」は吉田拡郎(44=岡山)がインから逃げ切って優勝した。激戦を見届けたボートレースファン歴48年の元天才ジョッキー田原成貴(67)は勝因を「チャレンジ精神」「対応力」と分析した。

ウイニングランでファンに手を振る吉田拡郎
ウイニングランでファンに手を振る吉田拡郎

【水面の残像】優勝戦で遠藤エミ選手が3カドに引いた時、私は「チャンスだ!」と思った。しかし、結果はイン吉田選手の圧巻逃げ。一瞬、私の心はエミちゃんに奪われかけたが、あの強い勝ち方を見せられてしまっては吉田選手にアッパレと言うしかない。

 勝因は初日、2日目にあったと思う。吉田選手のパートナー37号機といえばゴールデンウイーク開催で菅章哉選手が極上の伸び型に仕上げ、前節もオールチルト3度。前検日から伸びに手応えを得た吉田選手は初戦からチルトを3度に跳ね、2号艇ながら6コースを選択した。過去の実績通り、スリットで鋭く伸びた。しかし、1Mで内艇をまくり切れず、3着に終わった。

 私の興味は、その次のレースだった。果たして再びチルトを跳ねるのか。初戦の伸びを見れば、その選択が正解のように思えた。しかも、2走目は6号艇。もう一回、チルト3度を試すにはもってこいの枠だ。しかし、彼は冷静だった。通常のセッティングに戻し、6コースから1M最内を回って2着を確保。初戦とは打って変わった戦法で着をまとめたのだ。

 今回の優勝は、この2走がもたらしたと私は思う。まずSGの舞台でチルト3度にチャレンジしたこと、そして勝ち切れなかった結果を受け止めて瞬時に方針を切り替えたことだ。なかなかできることではない。

 ジョッキーの世界でもそうだが、結果の分析は誰でもできる。そこから導き出される方向性も目の肥えたファンなら何となく分かるだろう。だが、実際に対応するとなると話は別だ。ある程度の結果が出てしまうと、分かってはいるけどやめられない。今回のようにチルト3度でワンチャンありそうだな…と感じたなら、なおさらだ。しかし、キッパリと切り替えた。ここに吉田選手のすごさがある。

 あの判断によって結果的に準優1号艇を手に入れた。そしてラスト2走をトップスタートで逃げ切り、見事に栄冠を手にした。これこそが勝負の世界だ。チャレンジする姿勢、瞬時の切り替えと対応力。その大切さを改めて思い知らされた。吉田選手、ファンタスティックだ!