28日のNHK大河ドラマ「豊臣兄弟!」第25回に、後に四国を平定する長曾我部元親(磯部寛之=Alexandrоs)が登場し、戦国武将ブームで人気の1人だったこともあり、X(旧ツイッター)では「元親様」と視聴者が盛り上がった。

 織田信長(小栗旬)の居城安土城が完成し、宴の場にあでやかな女物の衣装を着て舞う踊り手が武将たちの目を引く。面を外すと男で、「土佐国主、長曾我部元親でござりまする」と信長に名乗った。四国統一を目論む元親は、かねて信長へのお目通りを願い、窓口役の明智光秀(要潤)を通じて実現させた。

 戦国大河ドラマでも登場は珍しいとみられる元親。長身、色白にしておとなしい性格から「姫若子(ひめわこ)」と呼ばれ、2000年代半ばごろの戦国武将ブームでは歴女らの萌えを誘い、人気者に。今回、演じ手も含めての鮮やかな登場ぶりに、Xには「雅よ…元親様!!」「ほんのり姫が残ってる元親様好きすぎる」「元親様お美しいですね!」「お召し物、姫若子の本領発揮」などと投稿が寄せられた。

 ドラマ終盤、信長は京都で馬ぞろえを催して天下統一への勢いを示す。天正9(1581)年2月といえば、本能寺の変まで1年あまり。信長は光秀に「長曾我部の四国切り取り、認めるわけにはいかぬ」と説得を命じる。狼狽する光秀に理由を問われると「気が変わったのじゃ」。冒頭の宴の場で信長は「これからも存分に進められよ」と元親に切り取りを認めていたのだった。

 諸説ある本能寺の変における光秀の動機には、怨恨や天下取り野心などが推測され、長曾我部説も挙げられる。信長の四国征伐を防ぐため、はたまた元親自身が黒幕だった…。「豊臣兄弟!」では信長と光秀に不穏さを感じさせる演出はなく、今回の宴も馬ぞろえも光秀に仕切らせている。信長からの不本意な説得指令は、長曾我部説の採用をうかがわせる。

 古くは、司馬遼太郎原作「国盗り物語」(1973年)が怨恨説を強くにじませた。苛烈な性格の信長(高橋英樹)は秀吉(火野正平)の明朗さを愛し、能力は認める光秀(近藤正臣)の理屈っぽい教養人の顔を嫌う。体罰を科し、面罵も。揚げ句に所領を召し上げ、これから攻める岩見と出雲を与えるという暴挙に至り、堪忍袋の緒が切れた。光秀が主人公となった「麒麟がくる」(2020~21年)は、複雑さものぞかせた。「戦のない世」を目指す光秀の思いが信長との間で交錯し、かつての主君・足利義昭殺害を命じられたことが一因かと思わせた。

 信長死後に元親は四国を制覇するも、秀吉に屈して土佐一国の主に逆戻り。盛衰激しい武将の描きぶりも注目される。