大阪市は25日、今月中旬から市内に出没していたシカを捕獲した。奈良公園から移動してきたとみられ、扱いには奈良県との間ですったもんだがあった。

 市内で目撃情報が相次いだシカの対応に市は苦慮していた。横山英幸市長は22日、Xに「有害鳥獣として取り扱われるため、個体を捕獲後に放獣することは困難な状況」と報告。府職員時代に「鹿を捕獲した経験がありますが、放っておけば大人しい性格なものの捕獲する際は相当暴れます」「トラウマです。シカだけど」と捕獲にも危険が伴うとしていた。

 ようやく捕獲を決断したところで、奇遇にもシカは府警の施設敷地内に入り込み、仕掛けたオリに自ら〝出頭〟。人に慣れており、ツノが人為的に切られていることから奈良公園から迷い込んできた可能性が高い。奈良のシカは神の使いとされており、国の天然記念物に指定されている。ニュースで報じられたこともあって、「奈良公園に戻してあげるべきだ」との声が大阪市や奈良県に寄せられていた。

 ところが、奈良県の山下真知事は「奈良公園(奈良市)から出たシカは天然記念物でなくなる。杓子定規に聞こえるかもしれないが、野生動物を(捕獲した自治体が)他の都道府県で放獣した例は確認していない。原則は崩せない」とクマやイノシシと同じ扱いになるとして、県での受け入れを拒否。横山氏や吉村洋文府知事から連絡があったというが、同様の趣旨を文書で回答したという。

 シカ問題に取り組む奈良市議のへずまりゅう氏はXに「鹿さんのおかげで奈良に観光客が来るのに利用できなくなればポイか。奈良が責任を持って迎えに行くべきだ」と抗議した。弁護士の橋下徹氏は民放番組で山下氏が維新所属とあって、「維新の政治力のなさが情けない。みんな維新のグループなんですから政治的にパンと決めればいいわけで」と責任の押し付けや決断の鈍さを嘆いた。

 当初は殺処分の可能性もあったシカだが、府内に受け入れを希望する施設があり、移される予定だ。山下氏はシカの越県は想定外だったとしたうえで、「頭数が増えていて、生存競争が激しくなっている。頭数管理は議論しなくてはならない。柵を設けるわけにはいかない」と課題を挙げた。今後も同様の事案が起きる可能性はあり、「トラウマです。シカだけど」とはもう言っていられない。