【ニュースシネマパラダイス】どうも! 有村昆です。菅直人元首相が認知症であることが報じられ、大きな注目を集めましたね。今年は東日本大震災から15年。取材に応じた伸子夫人によると、当時首相であった菅元首相には取材依頼が来ているそうなのですが、もうご本人は覚えていないような状態だそうです。現在は夫人、ご家族と穏やかに暮らされているとのこと。より体を労わって過ごしてほしいと願うばかりです。

 さて、そのようなニュースに関連し、今週は記憶を失う病を患ったヒットマンを描く新作映画「殺し屋のプロット」を紹介します。

 映画は御年74の名優、マイケル・キートンが主演。急速に記憶を失う病にかかった凄腕の殺し屋・ノックスが、疎遠だった息子の頼みを受け人生最後の完全犯罪に挑むという物語です。

 今作のポイントは何といっても主人公が記憶を失う病にかかっているという点です。警察や裏組織ではなく、主人公の急激に衰えていく認知能力こそがいちばんの敵なんですよ。これが面白かった。また、その設定を生かした演出も素晴らしい。時々何の説明もなくキートンが作業するシーンとかが始まるんですよ。僕たち観客もキートンが何をしているのかいまいち分からない。それが、認知症の典型的な「あれ、今何やってたんだっけ!?」という症状を観客に疑似体験させる仕組みになっているのです。決して派手な演出は多くないんですけど、そうした静かな緊張感がじわじわ効いてくる。渋い快感がある作品だと感じました。

 そして今作は、贖罪の物語でもあります。しばらく連絡がなかった息子の頼みで最後のミッションに挑むのですが、淡々としている中にも親子の愛情を感じる物語になっていました。

 そんな中で光ったのがキートンの渋みです。若さだけでない、年を取ったからこそ出る深みにうなりましたね。劇中にはアル・パチーノも出てくるんですけど彼はもう85歳ですからね。恐ろしいですよ。年老いたギラギラした感じが抜け切ったダンディーな2人の芝居のケレン味を存分に味わえるものになっていました。

 認知症が進むと、家族ですらその存在を忘れてしまうこともあります。殺し屋がテーマという一見物騒な映画ですが、今作を見て、改めて祖父母や両親のことを考えてみてはいかがでしょうか。