フランス人の裕福な既婚女性が今年初め、人工知能(AI)を使って米俳優ブラッド・ピットに成りすました犯行グループから70万ポンド(約1億4000万円)以上をだまし取られ、世界を驚愕させた詐欺事件。その被害女性が事件の背景をまとめた回顧録が来月発売される。
アンヌ・ドヌーシャテルさん(53)は著書「Je ne serai plusp une proie(もう私は獲物ではない)」で、事件後、無一文になった上、インターネット上で誹謗中傷の標的になり、重度のうつ病で精神科に入院していたことを明かした。
同著によると、インテリアデザイナーだったドヌーシャテルさんは、「利己的で他人を利用する億万長者のビジネスマンとの不幸な結婚生活を送っていた」が、ある日、インスタグラムでブラッド・ピットの母親を名乗る見知らぬ人物からメッセージを受け取った。
その人物から〝息子のブラッド・ピット〟を紹介され、SNSのテレグラムでやり取りを始めてからは、偽ピットとのメッセージのやり取りが「中毒になり、完全なファンタジーの世界にはまった」と告白した。
その結果、偽ピットは徐々に金銭を要求するようになったが、そのことでドヌーシャテルさんは逆に自分が「認められ、愛されていると感じた」という。それは自身の結婚で欠けていたものだったと振り返り、事件に巻き込まれたことで離婚したことが「詐欺事件から得られた唯一の良いことだった」と記した。
ドヌーシャテルさんは偽ピットに夫への不満を打ち明ける一方、偽ピットは自身のアルコール依存症や孤独、そして米女優アンジェリーナ・ジョリーとの離婚について話したという。また、世界的スターからロマンティックなメッセージを贈られ、挙句の果てにプロポーズまでされ、至福の極みだったと当時の胸中を明かした。
そのロマンス詐欺は2023年4月から翌年の6月まで14か月間続き、「腎臓がんの治療費」などを名目に偽ピットから送金を迫られ、結局、約70万ポンドをだまし取られた。
仏捜査当局は犯行グループを「ナイジェリア在住の男3人」と特定しているが、容疑者確保には至っていない。
事件後、ピットの代理人は犯行を非難した上で、「SNSで活動実態がない俳優からのオンライン上での一方的な接触には応じるべきではない」として、注意を喚起した。












