【山口敏太郎オカルト評論家のUMA図鑑#608】エリー湖は、アメリカ合衆国とカナダの国境付近に連なる五大湖の一つで、東から2番目に位置する湖だ。五大湖の中では比較的小さく浅い湖ではあるものの、一部深度は90メートルに達し、また世界で13番目の面積を有する巨大な淡水湖となっているため、決して小さな湖ではない。

 そのエリー湖には、「ベッシー」という謎の水生巨大生物がいると言われており、現在までにいくつもの目撃例が報告されている。ベッシーは、灰色で蛇のように長い体であるとされ、その大きさは30~40フィート(約9~12メートル)にも達するという。

 最初の目撃報告は1793年。スループフェリシティ号の船長や船員が、湖で大きなヘビのような首を持つ生物を目撃した。アヒル猟で訪れていた船長が、その生物に対して銃を発砲させたが効果はなかった。以来、幾度となくヘビのような巨大生物は目撃され続け、犬のような形をした頭部に、ヒレやとがった尾を持つなどの特徴が加えられた。

 実は、ベッシーという名前が付けられたのは比較的最近になってからのことだ。1990年、地元に住む男性が湖に現れた謎の巨大生物を目撃した。まるでネッシーのようだったと男性は証言し、その後も似た証言が数件寄せられたことで一気に注目されることとなった。

 この時、週刊誌編集者によって怪物の名前が公募され、「ネッシー似」ということと、そして湖岸にあるデービス・ベッセ原子力発電所にちなんで、ベッシーと名付けられた。

 このベッシーには、なんと襲撃されたという情報もある。1992年、家族旅行でエリー湖を訪れたある家族が、エリー湖をボートで遊泳中に水の跳ねる音が聞こえた。その直後、ベッシーが長い首を水面から出し、飲み込むかのようにボートへと覆いかぶさってきたのだ。

 一家は大破したボートと共に散り散りとなり、その後、救助された父親だけが生き残るという惨事となった。これは、ベッシーが人間を襲った唯一の例であるとされ、報道もされたという。

 さて、このように18世紀から目撃情報があり、人間をも襲ったというベッシーであるが、その実在については疑問視されている。

 先ほどのベッシー襲撃事件については、実際はタブロイド紙に掲載されたものであるため、そもそもがフェイクであるとされる。掲載時には、船を襲う首長竜の様子を上空から写した合成写真までご丁寧に用意されていた。

 他の目撃例についても、流木の誤認説など、さまざまに考察されているが、もちろん実在を疑う根拠はこれだけではない。実は、エリー湖は水質汚染が60年代から問題視されており、広大な農地からの農薬や化学肥料、そして降雨時にあふれた生活汚水の流出などによって深刻な被害をもたらしている。ピーク時には、魚もおらず鳥も寄り付かなかったと言われる。

 つまり、怪物・ベッシーといえども汚染されたエリー湖の水中に生息するのは不可能ではないか、というのが実在を疑問視する根拠となっているわけだ。だが、地元では先住民によってエリー湖に住まう怪物の伝承も語り継がれているという。これがベッシーと同種であるかは定かではないが、エリー湖には本当に何かしらの怪物がいる、もしくはいたのではないかという思いは捨てきれないものがある。