【山口敏太郎オカルト評論家のUMA図鑑#607】英国スコットランドのネス湖の怪物「ネッシー」は、現在でも調査が行われている世界的に有名なUMAの一つだ。近年では、最新のゲノム解析によって正体が巨大ウナギであるとする説が最有力としてあがったことは記憶に新しい。

 実は、水生生物であり、かつウナギのようなものであると伝わっている謎の生物が、同じ英国内に存在していると言われている。それが、アイルランドの「ウマウナギ」と呼ばれるUMAだ。

 ウマウナギは、中部西岸のコニマラ地域にある湖沼群に生息していると言われている怪物で、大きなウナギのような姿と、その首に馬のタテガミのようなものを備えていることから、そう呼ばれるようになった。「ペイステ(有害の意)」という名前で紹介されることもあり、古くから農民や漁民に被害をもたらす害獣として伝わっているという。

 目撃例が複数あり、しかも湖沼群の中の別々の湖でのウマウナギとおぼしき怪物の目撃が記録されている。

 19世紀末、マティ・マクドナーという人物がデリーレア湖付近を馬車で通りかかったところ、道路と湖の境に建っている高さ1メートルほどの石垣を飛び越えて怪物が現れた。驚いたマクドナーは急いで馬車を走らせて逃げたが、しばらくして振り返ると怪物の姿はすでになかった。

 1954年、図書館秘書の女性が友人とファンダ湖で釣りを楽しんでいると、水面から長い首と2つのコブを出した怪物の姿を目撃した。その後、ライオネル・レスリーというハンターが、湖にダイナマイトを仕掛けて爆発させたり、湖に幅70メートルもの網を張ったりしたが、成果はいずれも失敗に終わっている。

 この他、1950年代にはシャナーキーバー湖の川で黒い子馬のような生物がロバの周りをグルグルと回って川へ飛び込んだという話や、19世紀末にはバリナヒンチ湖の橋の下に9メートルに及ぶ怪物が引っ掛かっており、村人が2日間にわたってやりでいたぶっていたものの洪水が起こり、怪物がそのまま流されてしまったという話もある。

 ウマウナギとされる怪物は、このように同じ地域内の連結湖各所で目撃されていることから、それぞれの湖を行き来しているのではないかと考えられている。先のロバに付きまとっていた例に似たもので、葦の中を這いながら川へ移動していったという証言もあることから、陸上移動も可能な生物ということだろう。

 民俗学者トーマス・クロッカーは、巨大なアナゴまたはウナギがウマウナギの正体であると結論付けたが、実際にウナギは湿った地上であれば移動することが可能だという。だが、ウマのようなタテガミを持つという特徴がなんとも印象的だ。

 ちなみに、スコットランドやアイルランドには、川や湖に住むと言われる「ケルピー」という神話上の生物が伝わっている。ケルピーは、人間をおびき寄せて溺れさせる水魔とされているが、なんと馬のような姿でタテガミを持っているというのがウマウナギの特徴と重なるのだ。

 ひょっとすると、ウマウナギの存在がケルピー伝説を生んだとも考えられるかもしれない。コニマラの湖沼群に、まさしく何らかの巨大生物が生息していることは間違いないだろう。

【参考記事】天野ミチヒロ「本当にいる世界の『未知生物」案内』