【山口敏太郎オカルト評論家のUMA図鑑#589】数多くの未確認動物が目撃・報告される中で、人づてのみならず写真や動画として残されているものは多い。しかし、中にはそれが創作・でっち上げであったと判明している例も珍しくはない。今回紹介するUMAは、その有名なものの一つと言えるだろう。

 1930年代、ある写真家が畑に侵入してきた巨大なバッタの撮影に成功したとして話題になった。当時、北米大陸の南北にわたるグレートプレーンズという平原地帯では、現在でもたびたび問題視される蝗害(こうがい=バッタの被害)が発生していた。

 この時に捕獲されたと言われる巨大バッタの写真は、ほとんど人間と変わらないほどの大きさのバッタを成人男性が数人がかりで取り押さえているという衝撃的なものであった。

 巨大バッタ写真は、ライフルを手に持った猟師が人の体の半分ほどのバッタを持っているものや、トラックの3分の2ほどの大きさに及ぶバッタが荷台に乗せられているものなどさまざまある。だが、すでに述べたようにこれらの写真は完全な作り物である。

 作り出した張本人は、カンザス州ガーデン・シティーの写真家フランク・D・ポップ・コナード氏である。1935年、彼はガーデン・シティーにバッタの大群が押し寄せる状況を目の当たりにし、夜通しバッタのことが頭から離れなかった。朝になり、どうせならこのバッタを使って遊んでやろうと思い立ち、加工写真のアイデアをひらめいて、人間と拡大したバッタを重ね合わせた写真を作り始めた。

 彼は、写真家としての技術を駆使し、巨大バッタの写真をいくつも作り上げた。現在であれば、AI生成によって画像編集が手軽にできてしまうが、もちろん当時はそのような技術などなかったため、写真家の彼であってもその作業は至難の業であった。

 のちに「ワッパー・ホッパー(大うそバッタの意味)」と呼ばれるようになる写真の数々は、思惑通りに注目を集めた。さらには、絵はがきとしても人気を博したことで彼は大金を得ることになった。絵はがきの印刷は彼が引退する63歳まで続けられ、こんにちワッパー・ホッパーは市場で最も売れたノベルティカードとも言われている。

 一方で、彼の大きな誤算は人々の多くがこれを作り物だと疑わなかったことであった。彼はもともとジョークとして作り始めたのだが、「写真はうそをつかない」とも言われ、さらに合成技術もごく一部でしか知られていないような時代であったため、巨大バッタが実在すると信じてしまった人も多かったという。

 3億年前は、カモメに匹敵するほど巨大な肉食トンボが飛んでいたと言われており、そうした巨大昆虫がのさばっていた時代があったのは確かである。ただし、近年ではその理由が「大気の酸素濃度が高かった」ことにより、酸素の毒性を避けるために巨大化したということが最新の研究により唱えられているという。

 巨大昆虫は歴史の一つの現象として興味深いものではあるが、現代ではワッパー・ホッパーの実在を含めて、残念ながら極めて低いと言っていいだろう。

【参考記事】
https://cryptidz.fandom.com/wiki/Giant_Grasshoppers