【昭和90年代の人々】昭和文化を活用するクリエーター・企業を直撃する「昭和90年代の人々」。今回取り上げる“人々”は、昭和歌謡に特化した歌唱で話題を集めるアカペラグループ「リストラーズ」だ。大学時代からスーツ・眼鏡姿を貫き、約20年にわたって昭和の名曲を歌い上げてきた6人に、これまでの道のりと昭和歌謡への思いについて話を聞いた。

 東京工業大学のサークル内の、仲が良いグループから始まったというリストラーズ。老け顔という共通点を生かそうと、学生時代からスーツ・眼鏡姿で活動した。メンバーが全員40代に突入した今、リーダーの草野氏(注・メンバーは名字のみ表記)は「まだ職に就いていない時に、“リストラーズ”なんて名前をつけてしまって…」と苦笑する。それでもキャッチーなグループ名は会場ウケや認知度上昇に間違いなくつながったという。

 昭和歌謡を歌うというコンセプトは当初から変わらない。「結成した当時の40代が歌ってそうな曲を選んでいて。親が聴いていたのでなじみはありました」と大西氏が語るように、メンバーの世代より古い楽曲にも着目してきた。その中で昭和の曲の歌いやすさや歌詞の良さ、アレンジのしやすさに気づけたと6人は口をそろえる。現在は特撮番組の主題歌や、女性アイドルの人気曲のアカペラも展開。昭和という長い時代に生まれた音楽の数々を、フルに活用している。

 ちなみに普段のアカペラからも仲の良さがうかがえる6人だが、実は学年や進路もバラバラ。進学・就職を経て、現在は全員がサラリーマンとして勤務する。そのため家庭や職場との調整は欠かせない。練習日は土日のどちらかに設定し、2週続けて集まらないという「気遣い」も徹底してきた。おかげで周囲からの理解は得られていると語るのは野村氏だ。
「営業先でも活動のことは伝えています。社名を覚えていただけなくても、リストラーズで覚えていただくということはたまにありますね(笑い)」

 多忙な中でも活動を続けた結果、2014年にはフジテレビ系で放送された「ハモネプ♪ ジャパンカップ」への出演を果たした。平日にも練習を重ね、大舞台で披露したのは光GENJIの「ガラスの十代」。一番の出来だったと6人が振り返る魂の一曲は、以降のライブイベントで必ず披露するグループの十八番になった。

 一方で20年からはコロナ禍やメンバーの海外転勤の影響で、リモートでの活動を余儀なくされた。定期的に開催していたライブは中断し、ユーチューブチャンネルを本格的に稼働させた。澤田氏は「以前はライブの映像を投稿するだけで、『見せる』ということは意識していなくて。逆にコロナ禍でいろいろ動画を工夫するようになりました」と振り返る。積極的な発信が功を奏し、登録者数はコロナ禍前の800人から100倍の8万人まで増加した。

 特に大きな反響を呼んだのは、TM NETWORKの「Get Wild」のカバーだ。普段はボイスパーカッション担当の上村氏が、ボーカルも合わせて担当した動画は240万回再生を突破。上村氏は「小学生のころにアニメの『シティーハンター』は見ていたので思い入れはありましたが、たまたまボーカルを担当した曲がここまでになるとは…」と驚きを隠さない。今年4月にNetflixで実写版「シティーハンター」が公開された影響で、投稿して1年半がたった今も再生回数は“ジワ伸び”を続けているという。

 ユーチューブの活動が軌道に乗り、ファンからの声が届くことも増えたと加藤氏は明かす。「『元気が出た』『勇気が湧いた』といったコメントがあるのはうれしいですね。最近はコメント欄でリクエストもいただけるので、そこから選曲することもあります」

 約100曲のレパートリーを有するリストラーズでも、まだ着手できていない曲やアーティストは数多く存在するという。結成20年のグループにとっても、昭和は発掘の余地が残る時代なのだ。

 今後は開催が途絶えていたライブにも徐々に取り組みたいと明かす6人。「皆で集まって歌うという意味では鈍っているので、まずはちゃんと練習して、良きタイミングがあればいいなと…」と野村氏は堅実に先を見据える。草野氏も「最終的には単独のイベントをしたいですが、まずはできる範囲で昭和、そしてアカペラの良さを多くの人に伝えて。そして元気になってもらえるような活動を続けていきたいですね」と笑顔で意気込んだ。

 古き良き曲を大切に歌い上げ、令和の時代に独自の存在感を発揮しているリストラーズ。不惑のアカペラ集団の快進撃はまだ終わりそうにない。

☆りすとらーず 昭和歌謡に特化して活動するアカペラグループ。メンバーは(左から)上村氏、澤田氏、加藤氏、野村氏、草野氏、大西氏の6人。2003年に東京工業大学で結成し、14年にはフジテレビ系「ハモネプ♪ ジャパンカップ」に出演した。20周年を迎えた現在はユーチューブを中心に活動し、登録者数は8万人を突破している。ユーチューブチャンネルは【https://www.youtube.com/@restrers】から。