【昭和90年代の人々】令和も5年に突入する中、あえて昭和の文化や魅力を発信する人々に着目。昭和後期のテレビ番組を再現した動画で人気を博するユーチューブチャンネル「フィルムエストTV」を直撃だ。

昭和の香りが漂う動画
昭和の香りが漂う動画
こちらも昭和風だがよく見ると新500円玉
こちらも昭和風だがよく見ると新500円玉

 フィクション、さらには令和のトレンドも組み込みながら精力的に〝昭和風動画〟を作り続ける〝監督〟に、昭和文化の魅力や動画制作のこだわりをじっくり聞いた。

 ――昭和風動画を作った経緯は

 監督 動画制作自体は小学校4年生のころから始めましたが、今のような昭和風の動画をユーチューブに投稿するようになったのは2020年になってからですね。そのきっかけはコロナ禍が関係していまして…。ちょうどテレワークが声高に言われるようになった時に、最新の働き方であるはずの〝テレワーク〟という言葉の響きにどこか古めかしさを感じていたんですよ。もともと文字を書くのも好きだったので、その違和感から古めかしい文字を作りまして。「テレワークのロゴってきっとこんな感じだよね」ってSNSに投稿したところ結構バズったんですよ。

 ――出発点はオリジナルフォントだった、と

 監督 それ以前にも既に昭和っぽいテロップや動画には興味があって、再現する研究はしていたんです。「現代の出来事を、昭和の切り口で表現したらこうなる」みたいなことをやっていけば、これまでの研究の蓄積と相まって面白く見てもらえるんじゃないかと思ったのが始まりですね。

 ――そもそも昭和を好きになったのはいつ頃ですか?

 監督 確実に古いものが好きだと感じるようになったのは、だいたい中学校の時です。その頃ちょうど地元のテレビの放送局が開局して60周年とかのタイミングだったんですよ。その記念に過去のテレビ番組を一挙大放出、みたいな特番をやっていて。それを見た時に、レギュラー放送より興味津々になったのを覚えています。今の世界とは似て非なる世界というか、親もよく話題に上げているのにちゃんとは知らない、そんな〝近くて遠い時代〟に惹きつけられたのかなと思いますね。

 ――現代と昭和の違いをどう感じていますか?

 監督 テレビ映像にしても撮り方は違いますし、画面の中に映る人のしぐさや言い回しもちょっと違うんですよ。例えばテレビ番組のスポンサー紹介も、今は「この番組は、ご覧のスポンサーの提供でお送りします」っていう風にほぼ定型ですけど、昭和はこの言い回しもそれぞれ違っていて。そういう現代との細かい違いを積み重ねていくことで、リアルな昭和表現になっていくのかなとは思っていますね。

 ――表現のバリエーションという点は、クリエイターからすればうらやましいのでは

 監督 自由な表現ができていたという意味では、確かに昭和をうらやましく感じることはありますね…。ただ我々は昭和の〝上澄み〟のいい部分しか見てないので、そこに騙されてはいけないなと。当然表現としてこれはまずいなということは再現しないですし、〝見ていて楽しい昭和〟しか抽出してないということは意識していますね。

テロップや画質まで昭和の生中継を再現
テロップや画質まで昭和の生中継を再現

 ――常に細部をこだわっているように見えます

 監督 やっぱり映像を古くするだけでは、昭和っぽさは中途半端になってしまいますからね。言い回しだったりテロップの感じだったり、そういう部分に(リアリティーが)出てくるんじゃないかと思いますね。

 ――小道具等はどこから

 監督 小道具に関しては基本フリマアプリやネットオークションを使っています。出品者の方も「誰が買うんだ」と思うようなレトロなものを我々が買っています(笑い)。特に電話機はうちに6台あるんですよ。電話は当時のコミュニケーションには欠かせないツールなのでそろえておきたいなと…。何の業務方針だよって話ですけどね。

 ――映像も当時の機材で撮影しているのですか?

 監督 実は〝映像回り〟は最新機器を使っています。あくまで今のツールを使って昭和を再現したいという個人的なこだわりがあるので、結構手間はかかっていますね。フィルターを1枚かけるだけだと全く再現できた気がしないので、物理的に何回も動画を書き出して昭和の画質に近づけています。