――動画のコメント欄に、当時視聴していたかのような〝架空の思い出〟が投稿されることも恒例です
監督 こちらが情報を出しすぎない(番組の一部だけを再現する等)ことで、皆さんの中で想像を膨らませていただいているのかなと感じます。ある意味こちらがボケ役で、コメントを書いていただく方がツッコミ役といいますか。そういう意味では映像を公開するだけでは完結せずに、どんなコメントが付くかということを含めてようやく一つの作品として完成するのかな、とは感じていますね。いろいろ書いていただく中で、自分自身気付いていなかったようなことに気付かされることもあります。
――指摘でさらに〝昭和風〟がアップデートされそう
監督 そうですね…。後は図らずも演出したことが昭和っぽいと言われたり、逆に昭和の表現からオマージュしてきたものが、これは平成・令和っぽいと言われたりして。実際の昭和と視聴者の方の中の〝昭和感〟は、結構違うのかもしれないですね。
――実際にどんな認識のズレが?
監督 例えばビニール傘を映像の中に登場させる上で、昭和30年代には(ビニール傘が)既にあったことは調べていたんです。けれどコメント欄には「ビニール傘が(昭和を再現しきれていなくて)惜しい」みたいな声があって。
――新しいものだと思われた、と
監督 コンビニでビニール傘が多く売れたことで、皆さんの記憶の中ではだいぶ平成寄りのものになっていたのかもしれないですね。だから史実が必ずしも正しいとは限らないと言いますか。〝昭和感〟の表現に関しては、見る側の感覚になじむかどうかが結構重要なのかなと思います。
――視聴者層はやはり昭和を体験した年代が多いのでしょうか
監督 年齢層では35歳以下が多いので、むしろ昭和を経験していない方が多数派です。でもそういう若い方々も懐かしく感じてくれているみたいでちょっと不思議ですね…。うちの映像表現としては昭和後期から平成初期のものが多いので、ちょうどその頃に生まれ育った方が、「子供の頃の写真っぽいな」と感じられているのかもしれません。
――監督自身も平成生まれですが、昭和の知識を入れていく必要があるのでは
監督 これまでは普通の20代だったつもりですけど、フィルムエストが盛り上がってからは、土日はほぼ昔の映像を研究していて。どの時代を生きているのか分からなくなってます(笑い)。言葉の言い回しも変わってきていて、電話で話す声がおじさんっぽいよ、なんて同僚にも言われてますね。
――自分が既に生まれている時代、2000年代風の動画を作ることは考えませんか?
監督 それが2000年代の表現はどうもうまくできなくて…。たぶん〝昭和風動画〟も、自分がまだ生まれてない時代だから表現できている部分があると思うんですよ。例えば昭和の女性の〝独特なしゃべり方〟って、若い世代にはなんとなく理解してもらえますけど、昭和を知っている方にはピンと来てもらえないこともあるんですよね。同じことが00年代の動画を作った時に起きてしまうといいますか、独特な部分に気付けないと思うんです。
――では、あくまでも昭和の再現を続けていく
監督 平成風動画は、きっと令和生まれの子たちが物心ついた時に、「00年代ってこうだよね」という切り口でやってくれると思いますので。これからの子たちにお任せしたいですね。一方でもっと古い時代、60~70年代の映像にはかなり興味があります。
――さらにさかのぼるということですか?
監督 ただこれも限界がありまして…。映像に映り込む背景として考えていくと、〝60年代らしさ〟が残っている場所が少ないんですよ。もう最近はCGとかVFXで合成することも考えていて、その辺りの勉強も時間が許す限り取り組んでいますね。
――今後はどんな展開を考えていますか?
監督 個人的にやってみたいのは、全編〝昭和風〟の映画やドラマです。映像作品としてブラッシュアップしたものを作りたいという思いはありますね。あとは昭和を再現したラジオも気になっています。これまで音声のみの作品には手を付けてこなかったので、声だけでどこまで昭和らしさを出せるのか、ぜひ挑戦してみたいです。
――最後にファンにメッセージを
監督 とにかく動画には、コメントをいろいろ残していっていただけるとうれしいです。思ったこと、感じたことはぜひコメントしてください。そして他のユーチューバーの方と違って制作に時間はかかってしまいますが、必ず新作は上げるよう頑張りますので、これからもご覧いただけたらうれしいです。
【フィルムエストTV】現在の世相や架空のニュースを〝昭和風〟にアレンジした動画で人気を集めるユーチューブチャンネル。登録者数は26万人を突破し、著名人とのコラボも果たしている。
チャンネルは【http://www.youtube.com/@Film-est_TV】から。












