一般市民を襲撃した4事件で殺人や組織犯罪処罰法違反(組織的殺人未遂)などの罪に問われ、一審で死刑判決を受けた特定危険指定暴力団「工藤会」のトップ、総裁の野村悟被告(77)に対し12日、福岡高裁は一審判決を破棄したうえで、無期懲役を言い渡した。一審では「推認」でトップに死刑判決が下され、日本全国の暴力団組織に緊張が走った。それが高裁では殺人罪に関して覆ったことで、今後のヤクザ社会、特に山口組分裂抗争に影響を及ぼすか。

 野村被告、ナンバー2で会長の田上不美夫被告が起訴されているのは、元漁協組合長射殺事件、福岡県警元警部銃撃事件、看護師刺傷事件、元漁協組合長の孫で歯科医師刺傷事件の4つ。一審で野村被告には死刑、田上被告には無期懲役判決が言い渡されていた。両被告が控訴して開かれた二審で、野村被告は死刑から無期懲役、田上被告には控訴棄却となった。

 全面無罪を訴えている野村被告に関して、福岡高裁は元漁協組合長射殺事件について「意思決定の在り方は不明としか言いようがない」と共謀を認めず無罪とし、残る3事件は有罪とした。

 一審で死刑判決を言い渡された野村被告は「公正な判断をお願いしたんだけど、全部推認、推認。こんな裁判あるんか。あんた、生涯このことを後悔するよ」などと裁判長に向かって発言し、大きなニュースとなった。

 トップが指示を出したという直接的な証拠がない中、「推認」で死刑判決が出たことで、ヤクザ社会は大きく揺れた。

「証拠がなくても推認によりトップの責任が問われかねないということで、多少なりともヤクザの行動に歯止めや制限のようなものがかかったことは間違いないでしょう」(暴力団に詳しい関係者)

 2015年に起きた山口組分裂騒動にも、少なからず影響を与えたとの指摘もある。

「2021年に野村総裁の一審死刑判決が出たすぐ後、六代目山口組は傘下組織に『公共の場での抗争での銃使用禁止』を伝えました。トップが罪に問われないようにするためとみられています。特にここ2~3年は水面下での動きこそあれこう着状態となっていますが、それもこの判決が影響しているとみられています」(同)

 今回の高裁判決により今後の山口組分裂抗争が激化するなんてことはあるのか。

 元暴力団関係者は「野村総裁、田上会長は上告。最高裁で争われることになるので、すぐに抗争激化なんてことはないと思われる。ただ心理的に重しのようなものがちょっとは取れたという面はあるだろう。それがどのように作用するのか、注意深く見ていかなければならない」としたが、果たして――。