〝生活激変〟の影響は? 大相撲春場所は3月10日に大阪府立体育会館で初日を迎える。1月の初場所後には新大関琴ノ若(26=佐渡ヶ嶽)が誕生。いよいよ看板力士としての第一歩を踏み出す。兄弟子で元大関琴奨菊の秀ノ山親方(40=本紙評論家)は、琴ノ若が初優勝を目指す上でのポイントを指摘。昇進フィーバーで生活が多忙になったことについても「大関の自覚が芽生える」とプラスの効果を力説した。

【秀ノ山親方・がぶりトーク】みなさん、こんにちは! 春場所の初日まで、いよいよ2週間を切りました。今回取り上げるのは、私の弟弟子でもある琴ノ若です。初場所は大関とりに成功した一方で、あと一歩のところで初優勝には届きませんでした。千秋楽では本人も素直に喜べず、悔しい表情を浮かべていた。春場所では「今度こそ」という強い気持ちで臨むはずです。

 琴ノ若が優勝を目指していく上で、関脇に返り咲いた若元春との対戦が大きなポイントになると見ています。先場所は5連勝で迎えた6日目に土をつけられているし、対戦成績でも5勝4敗と拮抗している。賜杯をつかむためには、同じ相手に続けて負けるわけにはいきません。場所前には若元春のところへ出稽古に行って、不安を払拭しておいたほうがいい。

 自分の現役時代もそうでしたが、強い力士ほど負けた相手や伸び盛りの力士と積極的に稽古をしている。場所前から相手が自信を失うぐらいの厳しい稽古をすることで、本場所でも優位に立つことができるんですね。横綱や大関との対戦も大事だけど、その前に格下への取りこぼしをなくすこと。それが優勝への近道になると思います。

琴ノ若(手前左)の稽古を見守る琴奨菊(右奥=2020年、代表撮影)
琴ノ若(手前左)の稽古を見守る琴奨菊(右奥=2020年、代表撮影)

 それから、琴ノ若の環境面の変化についても触れておきます。私自身も経験があるけれど、大関昇進が決まると、とにかく忙しくなる(笑い)。テレビ番組やイベントに呼ばれる機会が増えるし、お祝い事が重なって生活がガラリと変わる。もちろん、日々の稽古や体のケアもあるので大変。ファンの中には相撲への影響を心配している人もいるかもしれませんね。

 結論を言えば、琴ノ若は決して稽古をおろそかにしていないし、私も心配していません。逆に、プラスの面もある。立場が変わることで、大関の自覚が芽生えてくるんですよ。横綱や大関は相撲協会の「看板」と言われます。本場所や巡業だけでなく、土俵の外の活動を通じて相撲の魅力をアピールして知ってもらう役割がある。大関という役職に就くイメージに近いかな。

 多くの方に相撲に興味を持っていただければ、集客にもつながるし、子供たちに夢を持ってもらうこともできる。すごく、やりがいがある地位だと思います。私が大関になった時も、自由に使えていた時間がなくなったぶん、隙間の時間を見つけて体を動かしていた。早朝や夜にトレーニングをしていたこともある。忙しかったけど、とても充実感がありました。

 それ以外にも、相撲とは異なる世界の人たちと接する機会が増えることで、刺激を受けたり勉強になることが多い。新しい出会いや経験をすることが、今後の琴ノ若の成長にもつながっていくはずです。

 新大関で臨む春場所は「琴ノ若」の名で土俵に上がる最後の場所でもある。好結果を残して、いい流れで「琴桜」につなげてもらいたいですね。それではまた!