シンガー・ソングライターの坂本つとむ(61)がTikTokでバズっている。コメント欄にあふれる「こんな還暦を迎えたい!」という言葉に背中を押され、今日もステージに上がるが、決してその道のりは平坦だったわけではない。そんな還暦ロックンローラーを直撃した。

 2023年1月にリリースした楽曲「人生上等! ~O世代の身上書~」のTikTokの“バズり”が止まらない。曲に合わせて歌って踊り、コミカルに動く坂本が好評で、425・5万再生を記録した動画など累計6000万再生を突破している(19日現在)。

 歌詞には坂本の自伝的な内容が込められ、「16」「31」「60」と自身のターニングポイントとなった年齢も入っている。それぞれ「ロックンロールに目覚めた年」「CD化を果たした年」「そして今」だという。だが、その間、多くの苦労を経験した。

「20歳で(歌手を目指し)上京しました。名古屋出身なので東京には知り合いもいないし、もちろんお金もない。それでも歌を歌わなければ本末転倒ですし、とりあえず歌えるところを、と思ってライブハウスに行くんですけど全然食えませんでしたね」

 当時は夕方から六本木のライブハウスで前座を務め、五反田や新宿のナイトクラブに足を運びパフォーマンス。休む間もなく清掃のアルバイトをこなした。

 30歳近くなると少しずつステージに上がる機会が増えていく。下積み時代に歌唱していたカバー楽曲がキッカケでテレビ番組に出演するなど飛躍を遂げ、念願のメジャーデビュー、そして結婚。決して懐に余裕はなかったが、右肩上がりの人生になるはずだった。ところが…。

「子供2人と犬1匹をおいて女房が出ていってね。正直、音楽だけでは食っていけないけど自分には音楽しかない。ライブハウスで歌いながら『ボクはこういうことができます!』『どこでも歌います!』って自作のチラシを配って、とにかくどこでも行きました。ライブは年間400本くらいかな」

 子育てとライブ活動に奔走し、気が付けば坂本は50歳になっていた。「このままでいいのか?」という思いが頭をよぎる。大人になった子供たちに「パパ、もう1回メジャーの世界でチャレンジしてみようと思うんだけど」と聞くと「応援するよ」と返ってきた。覚悟が決まった。

 54歳で出会った現事務所の社長のアドバイスを受け、長年貫いた“ロックンロール魂”の象徴・リーゼントヘアを一時的に封印。「発声が違う」と戸惑いながらもJ―POPに挑戦するなど必死で食らいついた結果、21年5月に配信したバラード「LOSTプロポーズ」が有線のお問い合わせランキングで1位に輝いた。そして迎えた還暦で満を持してロックンロールを解禁。楽曲「人生上等!」のヒットにつなげた。

 同曲はTikTokで注目を集めている。どうやらZ世代ならぬ、還暦のO世代(オジサン世代の意)にウケているようで「『60歳でリーゼントなんて髪の毛がなくてオレはできない』『昔を思い出したよ』とか、結構ぼくらの年齢の方も見てくれているんです」とうれしそうに話した。

 坂本の次なる目標は世界進出だ。世界中のユーザーが集うTikTokで「人生上等!」の英語バージョンを展開するなど挑戦は続く。年齢は全く気にならない。

「とにかくチャレンジしようと思って。ワクワクした夢を見てる感じですかね。朝イチで目標がパッて浮かぶんです。60歳で掲げた目標は、今まで培ったものを武器にできるから絶対に近い目標だと思う。世界に目を向けたロックンロールアルバムを作りたい!」
 その目はまっすぐ先を見据えていた。

 ☆さかもと・つとむ 1963年1月24日生まれ。愛知県出身。31歳でメジャーデビューし、30周年となる昨年1月にアルバム「人生上等!~O世代の身上書~」をリリース。TikTokが好調で累計6000万再生を突破している。