お世話になっております。ここ数日、建物の壁やタイルが何だか気になってしまう〝ぼっち記者〟です。今回は「東京ミネラルショー2023」のリポート後編をお届けします。前編とは異なり、出展社を中心に紹介させていただきますよ…!

 まずは書家・画家・篆刻(てんこく)家の沈強(しんきょう)氏のブースをご紹介します。

 篆刻は一般的に、篆書体という伝統的な書体の漢字をはんこに彫り刻むことを指します。最もイメージしやすいのは、志賀島から出土した「漢委奴国王印」でしょうか。篆刻という響きになじみがなかったという方も、日本史の教科書の前半に登場するあの字体と言えばピンとくるのでは?

 沈強氏はそんな書道・篆刻の世界で活躍を続けられているプロフェッショナルです。また書だけでなく、大学で洋画・デザインを学んでいたという経歴から、鮮やかな色を組み合わせて文字を表現する「彩墨書」というジャンルも開拓されているとのこと。経歴も実績もすごい先生なのですが、こちらが取材を申し込むよりも先に話しかけてこられるという、フランクさを併せ持った方でもありました。

笑顔で撮影に応じた沈強氏
笑顔で撮影に応じた沈強氏

 実は読者の皆さんも、かなりの確率で沈強氏の篆刻を目にしたことがあるはず。というのもサントリーの緑茶飲料「伊右衛門」のラベルに、10年以上沈強氏が手がけた印が使われていたというのです。そうとは知らずに私はどれだけ無造作にラベルをベリベリとはがしてきたことか…。当日は笑顔で取材に応じていただいたのですが、今こうして写真を記事にセットしている間も、何だかうしろめたさを感じています…。

 ミネラルショーの会場では、沈強氏にオリジナル印を彫っていただける即売会も実施されています。彫る文字や印材(はんこの素材)だけでなく、生物的な装飾が魅力の書体「鳥虫篆」もリクエストできるとのこと。自分だけのはんこを持ってみたかったという方は、一度足を運んでみてはいかがでしょうか?

沈強氏のブースには所せましと印が並んでいました
沈強氏のブースには所せましと印が並んでいました

 続いては「松井銘石」さんのブースをご紹介。こちらでは美しさで有名な石「菊花石」を取り扱っています。

 菊の花に見立てられる模様には優劣があり、芯(中心)の部分がはっきり見えていて、なおかつ〝花びら〟が1枚1枚分かれて広がっているものがより評価されるとのこと。ちゃんと花に見えることが大事、と置き換えればすんなり理解できますね。

菊花石のインテリア
菊花石のインテリア

 一方で会場では掘り出されたままの状態の石も展示中。ゴツゴツとしているものの、美しさのポテンシャルが感じられて個人的には好きでした…。例えるならば「クラスの友人と話していたら、その子のことが気になっているのは自分だけだと知った時」のようなソワソワ感がありましたね。

 ちなみに菊花石の有名な産地は岐阜県本巣市。一部区域では「特別天然記念物」に指定されています。そのため現在販売されている岐阜の菊花石は、指定される前に採取されたものや、県内の同じような環境から産出されたものだといいます。くれぐれも文化庁の目をかいくぐって…、なんてことではありませんので安心してくださいね。

 また、台座に乗せられている菊花石は盆栽のような印象を受けたのですが、実際に盆栽の展覧会に菊花石が展示されたり、菊花石の展示会に盆栽が加わったりすることもあるといいます。私の〝ぱっと見〟の印象よりずっと、両者には深いシナジーがあったようですね。

 今年からは小さく加工した菊花石を使ったインテリアも発売中。かつては床の間の置物として〝鎮座〟していた菊花石が、時代に合わせて気軽にテーブルの上で楽しめるようになったという変化に、「石材の未来」を垣間見ることができました。

菊花石の「置き方」も変わりつつあります
菊花石の「置き方」も変わりつつあります

 最後はこれまで触れなかった〝ジュエリー〟をご紹介。といっても取材した「デザイン工房 AmE’S」さんが手がけるのは「MY推しジュエリー」。〝推し〟のキャラクターやアイドルのイメージに合わせたジュエリーを、フルオーダーメイドで作製するサービスを展開されています。

 相談者の中には「〝推し〟のグッズが発売されたけど、思っていた色と違った」という経験を持つ方もいるそうで…。そんな微妙な色の違いにも答えられるように、幅広い色の石を用意しているといいます。確かにオーダーメイドであれば、オタクの方にとって「究極の〝解釈一致〟アイテム」が誕生しますからね…。納得する、しないという段階を通り越して理想を追求できるという点はとても魅力的に感じました。

様々な〝推し〟カラーに対応
様々な〝推し〟カラーに対応

 余談ですが、オリジナルキャラクターのジュエリーを依頼されることも珍しくないといいます。「グッズが販売されないなら自分で作る」という姿勢には、畏敬の念を覚えます…。

 一方で「オタバレ(オタクがバレること)」は避けたいという意識が根強くあることもまた事実。そこでAmE′Sさんは「プチ推しジュエリー」と題して、ささやかな表現ができるプランを新たに展開。一般の方には分からない絶妙なデザインが用意されています。宝石の数を変えればカップリングやグループも表現できるという仕様にも、オタク文化への高い「解像度」が感じられました。

「プチ推しジュエリー」は装飾も控えめ
「プチ推しジュエリー」は装飾も控えめ

「推し活」が急速に市民権を得ている以上、皆が〝自分だけが分かる〟ジュエリーを身に着ける時代も、それほど遠くはないのかもしれませんね。

 以上、前後編で東京ミネラルショー2023のリポートをお届けしました。多種多様な石が展示されていたことで、普段はその美しさや希少さに隠れてしまっている、〝奥深さ〟にも触れることができたように思います。ぜひ皆さんも会場に足を運んで、自分の好きなものを〝発掘〟してみてくださいね…!

【東京ミネラルショー2023】鉱物から天然石まで、約100万点の商品を取り揃えた、国内最大級の〝石の即売展示会〟。11日まで開催され、開場時間は10時から18時30分(最終日は16時まで)。チケットは事前販売制で1000円(4日通し券は1500円)、中学生以下は無料。

 詳細は公式HP【http://www.tokyomineralshow.com/】。