なぜ開催ありきなのか――。日本オリンピック委員会(JOC)の山下泰裕会長(66)と札幌市の秋元克広市長(67)は11日、都内で会見を行い、札幌市での2030年冬季五輪・パラリンピック招致を断念し、34年以降の招致を目指す方針を表明した。かねて五輪招致からの完全撤退を主張するラグビー元日本代表の平尾剛氏(48=神戸親和大教授)が本紙の取材に応じ、JOCと札幌市の一連の対応を疑問視した。

 計画が頓挫しても、JOCと札幌市の決意がブレることはなかった。当初は2026年大会の招致を目指していたものの、18年の北海道地震を受けて目標を30年大会に切り替えた。ところが、東京五輪・パラリンピックを巡る汚職、談合事件の影響もあり、地元の支持が伸び悩んでいる。さらにスウェーデンやフランスが30年大会の招致に乗り出すと宣言。苦境に立たされ、先延ばしを余儀なくされた。

 秋元市長は「東京2020大会で五輪への不信感が増大した。市民から依然として懸念と不安の声があり、十分理解が広がったとは言えない」と今回の決断に至った経緯を説明。山下会長からは34年大会以降の可能性を模索するように提案を受けたという。

 とはいえ、34年大会もいばらの道が待ち構えている。すでに02年に冬季五輪開催の実績を持つ米ソルトレークシティーが立候補を表明。山下会長は「われわれも34年はソルトレークシティーがかなり優位と認識している。すばらしい競技場が準備されており、市民の支持率も高い」と危機感を口にしつつも「こちらでもしっかりと計画を練りながら魅力的な大会の開催概要を市民に示していく。失った信頼を取り戻すべく、地道に努力を進めていくことが大事だと考える」と強調した。

 市民のさらなる反発も予想される中で、JOCと札幌市は改めて招致への意思を提示した。しかし、平尾氏は9月に札幌を訪れた際に「元議員などが所属する市民グループが積極的に反対運動をしていた。今後も継続的に運動を続ければ、断念せざるを得なくなるだろう」と予測。その上で「ただ、時間の経過とともに反対の機運が弱まると、なし崩し的に開催にこぎつける可能性があるので、引き続き反対運動をしていく必要がある」と訴えた。

 かねて平尾氏は「利権に群がる人たちがもう一度五輪をやりたいと動いているのだろうが、国民に災害規模の負担がかかる五輪はするべきじゃない」と主張。JOCと札幌市の説明不足に批判の声が出ている現状には「どれだけ説明しても空回りするはず。開催ありきの後づけにすぎないので。結果から逆算し、現状を肯定するため、深掘りすればするほど言葉を濁したような説明になるのでは」と語気を強めた。

 その指摘通り、報道陣から38年大会の招致に関する質問が飛ぶと、山下会長は「仮定のお話にはお答えできない」と説明を避けた。先行きが不透明の中、このまま招致へと突き進むのか。