サーフィン男子で東京五輪銀メダルの五十嵐カノア(25=木下グループ)は〝恐怖の海〟であえて己を磨く決断を下した。

 金メダルを目指す来年のパリ五輪は、南太平洋に浮かぶフランス領ポリネシアのタヒチ島を舞台に開催される。世界有数のビックウエーブで知られており、百戦錬磨の五十嵐ですら「世界で一番危ない波。リラックスできない波」と口にするほどの難所だ。

 そんな難所に初めて訪れたのは、12~13歳のころ。「1本目から波に飲まれて、すごい苦しい気持ちだった。岩で腕を切ってしまって、その時はもう一生やりたくないという気持ちだった」。苦笑いで当時を振り返ったが、五十嵐は決して逃げなかった。

「チャレンジャーという感じで、行きたくない時こそ、絶対行かないといけないと思った。タヒチで練習したくなかった時は絶対行くというように、自分でやりたくないことをやることで強くなる。それは両親がいつも言ってたこと」

 あえていばらの道に飛び込み、さらなる進化を目指して荒波にもまれてきた。10年以上の時を経て、今では「チャレンジを続けて『また行きたい』と思えるようになった」とにっこり。「ちゃんと海を読んで、いい波を探すことが大切になる」と冷静に自己分析できるまでに成長した。約1年後の大一番では「力強く、自分が自信持ってるサーフィンをみんなに見せたい」と力を込める。

 8日には都内で行われた所属先との社員交流報告会に出席。約200人の社員と親交を深めた五十嵐は「周りから『カノアはすごくうまくなった』と言ってもらえるようにしたい」と決意を述べた。今後もタヒチには数回足を運ぶ予定。金メダル獲得へ、入念に準備を進めていく構えだ。