昨年放送でヒットしたTBS系「マイファミリー」や今年6~8月に放送されたNHK・BSプレミアム時代劇「大富豪同心3」など、多くのドラマや舞台で活躍する俳優・白石朋也(44)は高校時代、サッカー・J1ガンバ大阪のユースでプレーした異色の経歴を持つ。選手から俳優に転身した理由や今後の目標などを聞いてみた。
白石は今年4月期のフジテレビ系「あなたがしてくれなくても」で主演した女優の奈緒や橋本マナミ、演歌歌手の丘みどりらが在籍する芸能事務所「アービング」に所属している。もともと同社は、白石のために設立された事務所だという。
「ずっとサッカーをやってたんですけど、高校3年の時にケガをして。どうしようかと思ってた時、今の事務所の会長が『やりたいんだったら会社をつくるよ』と言ってくれて、できた事務所なんです。1期生で、事務所の立ち上げからここひと筋です」
ひと口に「サッカーをやってた」と言うが、普通のレベルではない。G大阪のユースに所属していた。
「2年先輩がツネくん(宮本恒靖)、1年下に稲本潤一、橋本英郎、新井場徹、2年下が大黒将志、二川孝広…。のちにプロとか日本代表になる、そうそうたるメンバーがいましたね。僕のポジションはサイド。両方できたけど右の方が多かった。中盤もサイドバックもやりました」
サッカーを続けるつもりだったが、ユースの最終学年である高校3年の時にヒザをケガしたことが転機だった。
「そこまで重傷ではなかったけど、心が折れたというか、メンタルがやられてしまった。『もういいかな』って」
サッカーをあきらめたが、当初は俳優になるなど「全く考えてなかった」と明かす。
「急に思い立ったんですね。今考えると恐ろしいですけど。その時は、俳優がまさかこんな難しいとは思わなかったので(笑い)。もっと簡単に考えてて。やってみたら全然違った。〝もらった台本を覚えてやってる〟くらいにしか思ってなかったけど、とんでもない話だった」
俳優に転身した後、かつてのサッカーの同志が活躍する姿は見られなかった。
「やっぱり自信がなかったんでしょうね。でも、俳優を始めてしばらくしたら、また見始めました。2002年の日韓W杯にはツネくんや稲本も出てたし、もう大ファンでした。05年には、一緒にやっていたメンバーが中心のガンバがJリーグで優勝したし」
サッカーと役者には共通点があるとみる。
「どっちも周りを見ることが大事ってこと。サッカーも『自分がどこにいて周りがどこにいる』ということを常に考える。全員がそれを90分やってはじめてパスがつながる。俳優も作品の中の一つで、録音、照明などスタッフがいて、みんなで作品をつくるので」
ユース時代に一緒だった稲本は今も、漫画「キャプテン翼」作者の高橋陽一氏が代表で関東サッカーリーグの南葛SCでプレーしている。
「やっぱり刺激になりますよ。橋本も今年1月に引退したけど、ずっとプレーしてたし。ツネくんなんか日本サッカー協会(JFA)理事ですしね」
今後はサッカーで培った身体能力を生かし、アクションができる俳優を目指す。
「昔から漠然と真田広之さんには憧れてて。『24‐TWENTY FOUR‐』のジャック・バウアーは一番好きなキャラクター。ああいう役をやりたいですね」と目を輝かせた。
☆しろいし・ともや 1979年2月23日生まれ。福島県出身。高校時代はG大阪ユースに所属。卒業後、アービング所属の俳優となり、97年に青山メインランドのCMでデビュー。NHK大河ドラマ「天地人」(2009年)、「八重の桜」(13年)、TBS系「マイファミリー」などのドラマや舞台、映画で活躍している。