戸籍上は男性で、性同一性障害の50代の経産省職員が省内の女性用トイレの使用を制限されているのは違法だとして国に改善を求めていた上告審で、最高裁は11日、使用制限は違法として、職員が勝訴した。トランスジェンダーの職場での対応について最高裁が初判断を示したが、誤解を招きかねず、今後混乱も生じかねない。

 職員は1999年に性同一性障害の診断を受け、2008年から女性として生活を送るようになった。経産省においては、上司に相談し、執務階から2階以上離れた階の女性トイレを使用していた。職員は13年に自由に女性トイレを使用できるよう訴えたが、人事院は認めない旨の判断をしていた。職員は性別適合手術は健康上の理由から受けていなかった。

 判決を受け、ネット上では「トイレ使用制限」「自称女性」などがツイッターでトレンドになり、「男性器が付いていても女性と性自認していれば女子トイレに入っていいお墨付きが出たのか」「心は女性と自称するオジサンが女子トイレにあふれ返るのか」「女性トイレが危険な場所になる」などの投稿であふれた。

 最高裁は判決文で「本判決は、トイレを含め、不特定または多数の人々の使用が想定されている公共施設の使用の在り方について触れるものではない。この問題は、機会を改めて議論されるべきである」としており、あくまでこの職員を巡っての判断だと強調している。

 経済評論家の上念司氏は自身のユーチューブチャンネルで「このケースについて違法だとなって、広く一般にセーフじゃない。トランスジェンダーを自称したら女子トイレ入り放題っていう立法措置がなされたわけじゃない。性同一性障害と診断されてないおっさんが、『俺、女です』って言って、いきなりトイレに入ったら捕まりますからね」と指摘する。

 先月、成立したLGBT理解増進法を巡っても女性用トイレや女湯にトランスジェンダー女性になりすました女装男性の出現問題などへの対応が話題となったばかりで、混乱は続きそうだ。