1966年に静岡で起きた一家4人が殺害された強盗殺人事件で、死刑が確定した後に釈放され、裁判のやり直しが決まった袴田巌さん(87)の再審公判で、検察側が袴田さんの有罪立証を行う方針を静岡地裁に伝えた。再審は長期化の見通しとなり、支援者からは「検察のメンツだけ」と怒りの声が渦巻いている。
袴田さんの事件を巡っては今年3月に東京高裁が再審開始を認め、東京高検が特別抗告を断念したため、公判実施が確定した。刑事訴訟法では再審開始は「無罪を言い渡すべき明らかな証拠」があった時と定めており、再審では袴田さんに無罪が言い渡される公算が大きい。だが、検察側は血痕が付着した5点の衣類が捜査機関が捏造したとの高裁判断に「捏造との主張に根拠はない」と反論。審理の長期化は避けられない情勢となった。
超党派の国会議員による「袴田巌死刑囚救援議員連盟」(自民党の塩谷立会長)で長年、冤罪を訴える袴田さんを支援している日本維新の会の鈴木宗男参院議員はブログで「検察の時間稼ぎともいうべき行為に、憤りを感じる。袴田巌さん87歳である。半世紀以上人生を無駄にさせたことに、検察は人間としての心があるのだろうかと腹立たしい思いだ」「屁理屈に等しい物言いである」と怒りを寄せた。
支援関係者は「証拠を捏造したというのが検察のプライドを傷つけたのか、もはやメンツだけ。袴田さんが87歳と高齢であることで、いたずらに審理を長引かせて時間切れを狙っている」ともこぼす。
事件は66年6月30日午前1時過ぎに静岡・清水市(現静岡市清水区)のみそ製造会社の専務宅で4人が殺害され、放火された。袴田さんは「出火当時は寮で寝ていた」と供述していたが、取り調べでパジャマ姿で犯行に及んだと自白し、起訴された。
公判では一転して、無罪を主張した袴田さんに対し、事件から1年2か月後にみそタンクから血痕が付着した5点の衣類が発見され、犯行を決定づける証拠とされた。ところが、袴田さんが到底着用できないサイズのズボンだったり、発見までの経過時間では血痕の赤みが衣類に残らないとの弁護側の実験結果が示され、捏造の可能性が高いとされていた。
袴田さんは48年にも及んだ拘留と死刑執行への恐怖から拘禁症状を起こし、意思疎通を図るのも困難な健康状態に陥っている。袴田事件弁護団の事務局長を務める小川秀世弁護士が「無実と分かりながらもやっているとしか思えない」と怒りをあらわにすれば、袴田さんの姉のひで子さん(90)は「検察庁の都合だから仕方ない。これからの裁判を頑張っていく」と話した。
静岡地検の奥田洋平次席検事は裁判の長期化を狙っているとの批判に対し、「引き延ばすつもりは毛頭ない」としている。










