将棋の藤井聡太6冠(20=竜王・王位・叡王・棋王・王将・棋聖)が1日、長野県高山村で指された第81期名人戦7番勝負第5局で渡辺明名人(39)を破り、4勝1敗で名人を初獲得し、7冠となった。20歳10か月での名人奪取は最も若く、7タイトル保持も最年少の快挙だ。将棋界のトップに立った藤井7冠には、将棋の海外普及を実現すべく“世界のフジイ”として大車輪の活躍が期待されている。
名人戦7番勝負第5局は、初日、2日目ともにカド番で先手番の渡辺名人がうまく指して徐々にリードを奪ったが、終盤に藤井6冠が逆転。最後は飛車打ちから押し切り、谷川浩司十七世名人の最年少名人(21歳2か月)、さらに羽生善治九段の最年少7冠(25歳4か月)の記録を更新するダブル偉業を達成した。
藤井は2020年の棋聖、22年の王将、今年3月の棋王、そして今回の名人と4タイトルを渡辺から奪取し、将棋界の頂点に立った形だ。今後は将棋界にある全8冠の総仕上げとなる王座を目指すことになる。そのための道のりは険しいが、現在、行われている挑戦者決定トーナメントを勝ち抜いて王座挑戦権を獲得した上で棋聖と王位を防衛できれば、早ければ今秋にも前人未到の全8冠制覇という大偉業に挑戦することになる。
もはや「藤井聡太」の名前は渋谷を歩く女子高生でも知っており、国内での知名度はトップクラス。そんなスーパースターを将棋界が国内だけにとどめておくわけがない。藤井は5日からタイトル防衛戦となる第94期棋聖戦5番勝負第1局を、ベトナム中部のリゾート都市ダナン市のホテル「ダナン三日月」で行うことが決定している。
初の海外対局となるが、これは将棋の海外普及を目指す日本将棋連盟が藤井に“託した”海外普及策の一環とも言える。同連盟も「藤井7冠には将棋文化を国内外の多くの方々に知ってもらうための起爆剤になってもらいたい」と期待を隠さない。
それもそのはず。世界的テーブルゲームの競技人口を見ると、チェスと麻雀がそれぞれ7億人、囲碁が4000万人と言われるなか、将棋は600万人と見劣りするのが現状だ。また、藤井にとって初の海外対局の地となるベトナムは「将棋と言えば日本の将棋ではなく、中国の将棋『シャンチー』が一般的」(ベトナム在住者)な国でアウェー感が漂う。
それでもひとたびスーパースターが現れると、状況はガラリ一変する。開催地となる「ダナン三日月」は「ベトナムにおける日本文化の発信基地にもなっている」(同ホテル関係者)といい、藤井の対局で日本の将棋文化がベトナムでも受け入れられるきっかけになることを期待する声が上がった。
もちろん、今後も海外での対局は推進されていく。会場国の選定基準について、日本将棋連盟は「タイトル戦ですので、その舞台にふさわしい会場が望ましいですが、誘致を希望される現地の皆さまの熱意や多くのファンに見ていただけるような環境もポイントになると思います」という。
藤井が多くのタイトルを保持し続ければ、海外でのタイトル戦も増えるに違いない。まさに将棋界と藤井が両輪になって普及に努めるというわけだ。
そのためには史上最年少の7冠を達成した余韻に浸っているヒマはない。5日開幕の棋聖戦5番勝負は、過去の対戦成績2勝2敗の佐々木大地七段が相手で、佐々木とは王位戦も控えている。まずは、ベトナムのダナンでしっかり結果を残し、“藤井聡太”から世界の“ソウタ・フジイ”へ駆け上がる。











