岸田文雄首相に向かって爆発物を投げたとして威力業務妨害の容疑で逮捕された無職の木村隆二容疑者(24)が、年齢制限が理由で参院選に立候補できないのは違憲だと国を提訴していたことが18日に判明し、「なんてことをしてくれたんだ」と嘆きの声が上がっている。被選挙権年齢引き下げを期待していた人たちが「この事件のせいで議論が後退する」と懸念しているのだ。
木村容疑者は18日も黙秘を続けている。一方で昨年7月の参院選に年齢制限で立候補できなかったことは違憲だとして、国に対して損害賠償を求めて神戸地裁に提訴していたことが判明。棄却となったが、裁判の中で安倍晋三元首相の国葬実施を批判するなど政治への関心は高かったようだ。
参院選の被選挙権は満30歳以上で木村容疑者は立候補できない。また、木村容疑者とみられる人物が以前に、地元市議の市政報告会に参加し、関係者に「市議になりたい。被選挙権を引き下げてほしい」と訴えていたこともあったという。市議の被選挙権は満25歳以上で木村容疑者はやはり立候補できない。
ネットでは木村容疑者のものと思われるツイッターアカウントも見つかっている。昨年6月からツイートが開始され、被選挙権年齢や供託金に関する裁判についてつぶやいていた。最初のツイートでは「参院選に立候補出来なかったとして、20代前半の原告が国を提訴しました」と報告し、訴状の画像を投稿。NHKによると警察もこのアカウントを把握しているという。
被選挙権年齢の制限と高すぎる供託金への不満に言及する投稿が多い。また、岸田氏についての書き込みもあり、昨年9月に岸田氏が安倍氏の国葬について語っている報道を引用して、「岸田首相も世襲3世ですが、民意を無視する人が政治家には通常なれません。世襲がはびこる原因は、立候補するだけで300万円もの供託金を要求する違憲な公選法があるからです」と選挙制度を批判するなかで岸田氏に言及していた。
政治家になりたいのに制限があって立候補できない――。そんな不満が伝わるが、犯行の動機になっているかは不明だ。しかし、こうした事情が明らかになることで懸念も生まれている。
昨今、選挙権年齢が引き下げられ、18歳から投票できるようになったこともあり、被選挙権年齢の引き下げを求める議論が起きている。引き下げるべきだと考える東京・武蔵野市議の下田大気氏は「25歳未満で市議をやるのはありだと思いますよ。18歳からでも20歳からでも構わない。社会人経験があるからいいってわけでもない。変えた方がいいですよ」と語った。
街中でも若い人から被選挙権年齢を引き下げてほしいとの訴えをされることがあるという。「満25歳以上という年齢制限を下げれば、志を持った若者が立候補でき、おのずと投票率も上がってくるはず」(同)
下田氏に限らず、若者の政治参加を促すために被選挙権年齢の引き下げを期待する人は多い。しかし、木村容疑者のテロ行為によって流れが変わるかもしれない。
下田氏は「こういうことがあると事件を理由に引き下げはやめようってなりますよね。今のままでいいのかと前向きだった人も『いったん立ち止まろう』となるでしょう」と懸念した。
「テロリストの思い通りにしていいのか」という声は大きく、引き下げ議論が衰退するかもしれないわけだ。木村容疑者の犯行動機に被選挙権年齢への不満があったとしたら、むしろ引き下げ議論の邪魔をしたことになる。












