【球界こぼれ話】今季から米メジャーで導入された「ピッチクロック」が早くも注目を集めている。

 試合ペースを速めるため、投手は走者なしの場合15秒以内、走者がいる場合は20秒以内に投球動作に入らなければ1ボールが宣告される。一方、打者は残り8秒になるまでに打つ構えをしなければ1ストライクが宣告されるという厳格なルールだ。

 すでに日本でも球界OBや評論家が指摘するように投球動作、打者の構えがどこからカウントされるのかが難解で、現時点では各審判の裁量によるところも大きい。大谷翔平(28=エンゼルス)も日本時間6日のマリナーズ戦で投打にわたってこのルール違反を取られ対応を迫られた。相手だけでなく時間との戦いも強いられるこの新ルール。選手にとっては厄介極まりない。

 ただこのピッチクロック。仮に日本で導入されれば選手はともかく球場に来場するファンには「大歓迎」されるはず。試合時間が間違いなく短くなるからだ。

 すでにアメリカでは数値が出始めているが、1試合3時間以上を要するのが一般的だったメジャーの試合が今季は3時間以内で終わるゲームが多発している。この要因がピッチクロック導入のおかげであることは明白。試合時間短縮には絶大な効果が実証されている。

 NPB(日本野球機構)が公表しているデータによれば、2022年のセ・パ全試合の平均試合時間は3時間14分。平均試合時間が3時間を切る球団は一つもなかった。この状況下でピッチクロックを導入すれば午後6時開始のナイターでも延長戦に突入しない限り、高い確率で午後9時前には試合が終わる。そうなれば来場したファンは終電時間を気にせず試合観戦できる。この「安心感」は来場者にとって大きいだろう。 

 先日北海道・北広島市に開場した日本ハムの新本拠地「エスコンフィールド北海道」では、ナイター後の大混雑によるファンの深夜帰宅が問題視された。ピッチクロックにより試合時間が短縮されればこうした問題も自然解決できるかもしれない。

 車社会のアメリカとは異なり日本の野球観戦には電車、バスといった公共交通機関が必須と言える。この視点から考えても、日本球界は早急にピッチクロック導入を検討すべきではないか。