岸田文雄首相が3月21日にウクライナの首都キーウを電撃訪問し、ゼレンスキー大統領と会談した。
 そのとき岸田氏がゼレンスキー氏に渡した土産の1つが宮島産「必勝」しゃもじだった。

<日露戦争が勃発した際、広島から出征した日本兵たちが「飯をとる」しゃもじについて、敵を「召し取る」(=捕らえる)縁起物とし、こぞって「必勝」と書いて神社に奉納。これが功を奏したのか、世界中が日本敗戦を予想するなか日本は当時のロシアに大勝利を収めた>(3月24日、東スポWEB)

 ウクライナの勝利を日本が望んでいるというメッセージだ。

<そんななか外交的意味合いを心配する声もある。/「当然、ロシアは今回の電撃訪問をよく思っていない。電撃訪問が明らかになってすぐ、ロシアが日本海上空に核兵器搭載可能な長距離戦略爆撃機を7時間飛行させたと発表したのは日本をけん制するため。そこへきて岸田首相が『プーチンを捕まえろ!』とのメッセージが込められた代物をゼレンスキー大統領に贈ったとなれば、不必要にロシアを刺激しかねない」(永田町関係者)>(同上)

 筆者はこのような心配は取り越し苦労に過ぎないと思っている。ロシアは木のヘラ(しゃもじ)に「必勝」と書けば願いが叶うというような発想について「東洋の神秘」と受け止め、まともな考察の対象にしないからだ。

 岸田首相の訪宇に対するロシアの反応は抑制的だ。その理由は2つある。まず、この訪問が不意打ちではなく、クレムリン(ロシア大統領府)に事前通報していたからだ。

<日本政府が岸田文雄首相のウクライナ訪問をロシアに事前通告していたことが22日、分かった>(3月22日「日本経済新聞」電子版)という報道は、事実であると筆者も複数の確実な筋から確認している。

 さらにこれが最も重要な要因であるが、日本のウクライナに対する武器供与がロシアの想定をはるかに下回っていたからだ。具体的には、殺傷能力を持たない装備品を40億円分供与するにとどまった。自衛隊が購入する戦闘機F35の値段が1機約150億円、高速道路の建設費が1キロメートルあたり約50億円であることと比較すれば、40億円は微々たる額だ。高速道路800メートル分のカネしか出さないというのは日本の国力と比較して小さすぎる。

 ロシアは岸田首相の激しいロシア非難の言葉や「必勝」しゃもじよりも、日本の実際の行動を見て、今回は抑制的な対応をすると決めたのだ。