侍ジャパンが16日の第5回WBC準々決勝(東京ドーム)でイタリアを9―3で下し、5大会連続の4強入りを決めた。「3番・投手兼DH」で先発した注目の大谷翔平投手(28=エンゼルス)は、5回途中まで4安打2失点で大会2勝目をマーク。3回の打席ではセーフティーバントを決めて先制を含む一挙4得点を呼び込むなど、投打の活躍でチームを米国行きへと導いた。その一方、決戦前には日本の準決勝進出を巡る〝カード変更騒動〟も発生したが…。大谷ら侍ジャパン勢は〝アメリカあるある〟の「想定内」として受け止めていた。

 一球ごとに魂を込めた。東京ドームで大会2度目の先発マウンドに立った大谷は、イタリア打線を相手に「オリャーッ!」「ウォーッ!」と絶叫しながら力投。2回には164キロ直球で三振を奪うなど、気迫のこもった投球で4回までを2安打無失点に抑え込んだ。

 4点リードの5回に2点を返されたところで降板。試合後は「4回ぐらいまでは確実にいきたいなという感じだった。ダルさん始め他の素晴らしいピッチャーが控えていたので、行けるところまで行ければいいんじゃないかと思っていた。最後の2個のデッドボールは余計だった」と振り返った。

 それでも大谷の投打にわたる奮闘が、この日もチームを勢いづけた。0―0の3回一死一塁で迎えた第2打席では、相手の「大谷シフト」の裏をかくセーフティーバントを三塁側に転がして成功させると、続く吉田の内野ゴロで1点を先制。さらに岡本の3ランをも呼び込んだ。

「極端な守備シフトだったので、理想はもうちょっと強めに確実に一、二塁をつくるバントが良かったが、結果的にそれ以上の一、三塁になったので、狙いとしては良かったんじゃないかと思う」

 試合が終わると、そのまま侍ジャパンの面々とともにチャーター機で準決勝の舞台・米国マイアミへと飛び立った。

 3大会ぶりの世界一奪回まで残り2試合。準決勝の相手はプエルトリコ―メキシコ戦の勝者となったが、気になるのがこの日の試合前に浮上した〝対戦相手変更騒動〟だ。

 当初、日本の準決勝の相手は米国だったはずだが、この日に更新されたWBCの大会公式ホームページで、変更されたことが判明。侍ジャパンの関係者の間でも混乱が生じた。

 急きょ、MLBの運営戦略責任者、クリス・マリナック氏が試合前に東京ドームで会見を開き「組み合わせを変更したわけではない」と強調。そして「米国と日本が、どういうケースであっても準決勝で対戦するという情報自体がそもそもの誤り」と説明した。

 どうしてそうなったのか。関係者の話を総合すると、WBC主催者サイドが今回の日本と米国の試合についての〝特例(1次ラウンドの通過順位にかかわらず試合日を固定)〟を、解釈の仕方によってはどちらともとれるあいまいな言い回しで説明したことが、混乱の原因となったという。

 だが、侍ジャパンの関係者の1人は「チーム全体で準決勝で米国と対戦することを想定しながら動いていたことは否定できない」としながらも、次のように言って笑い飛ばした。

「簡単に言えば『アメリカあるある』という流れだと思います。テレビ放映権の問題でMLBが都合よく日程を動かすのは、レギュラーシーズンやポストシーズンでもよくあるケース。だから、そういうことも想定しながらわれわれは準備していたし、ハッキリ言ってしまえば誰も動揺していません。おそらくMLB側としては決勝で米国対日本が実現すれば、大谷対トラウトなどの夢対決もオンエアできるわけで、ビッグマネーが呼び込めると計算したのでしょう。望むところじゃないですか。大谷だって逆に決勝で米国を〝ブッ叩いてやる〟と思っているはずですよ」

 たとえ米国側から〝横ヤリ〟を入れられようが何だろうが、大谷ら侍ジャパンは世界一を目指して、このまま突っ走る覚悟だ。

【韓国メディアは「謀略」「非常識な取り組み」】他国はどう報じたか。韓国メディアのスポーツ朝鮮(電子版)は「WBCを主催するMLB事務局が、準決勝スケジュールをこっそり変えた。米国を何とか決勝まで行かせようとする謀略と見られる」と報じるとともに「MLBは何の説明もなく数日前に対戦表を変え、米国の8強が確定した後であるこの日に、該当規定を発表した」「MLB事務局は今回のWBCを通じて『最強アメリカ野球』の地位を取り戻し、米国内野球人気復興期を迎えたい。ところが米国は予想より戦力が圧倒的ではなく、思ったより強い日本と準決勝で戦いたくないようだ。ひたすら自国の利得だけ考えるMLB事務局の非常識な取り組みだ」と断じた。