ロシアはウクライナ侵攻を止めることなく、2022年が終わろうとしている。メディアの扱いは小さくなっているが、問題が解決したわけではない。ウクライナ情勢について数々の情報発信を行ってきたウクライナ人国際政治学者のグレンコ・アンドリー氏(35)が、現在の状況や今後の展望を徹底解説。日本人へのメッセージも送った。
ロシアは2月24日にウクライナへの軍事侵攻を開始。両軍の死傷者は10万人以上とみられ、ウクライナでは一般市民にも多くの被害が出ている。
グレンコ氏は現在の戦況について「ロシアはウクライナを手に入れようとしたが失敗した。そこで、今は同時にいくつもの手段を行っている」と語る。その一つが、インフラや民間施設の破壊だ。
「物理的にウクライナ人を殺したり凍死させたりすることで、国を捨てて脱出させようとしている」
守るべき家族が攻撃されることで、士気の高いウクライナ兵の士気を低下させたい思惑もある。
同時に「新たに動員した20万人の兵力の訓練を終え、来年1~3月に投入して戦局逆転を狙っている」という。
ロシアは侵攻の長期化も辞さない。ウクライナ市民の様子が心配だが「戦争が長引き、窮屈な生活や戦線からの訃報で決して明るくはない。同時にロシアへの憎しみ、怒りの気持ちが強い。中途半端に停戦すると、また準備して攻めてくるから、今回で全土からの排除を目指している。9割の国民はこの認識だ」と話す。ウクライナのゼレンスキー大統領が電撃渡米し、支援を確認したのもそのためだ。
それにしても、ロシアはなぜ、ここまでウクライナに執着するのか。
「ロシアは『ウクライナを征服しないといけない。あきらめたら本国が危なくなる』という妄想の世界観で支配されています。日本でよく『プーチンが思っているだけで、一般人はどっちでもいい』という意見が見られますが誤り。プーチンが国民の願望に沿っている」
グレンコ氏は、ロシアが以前からウクライナを支配する願望を持っていたと指摘した上で、「それなのに、ウクライナは危機感を持たずに軍事力を減らし続け、同盟関係を築くこともしなかった。非武装中立で無防備になってクリミア、ドンバス、そして今回の全面戦争になった。軍事力があれば今回の戦争は防げた可能性がある」という。
日本もロシアの隣国であり、ウクライナの状況は対岸の火事ではない。ロシア以外にも中国、北朝鮮という独裁国家が隣にあり「今の安全保障では十分な対応ができず、防衛力強化は大きな課題。常に自国の安全保障を怠ってはならない」と警鐘を鳴らす。
グレンコ氏はロシアの侵攻開始以降、ウクライナ側に譲歩を求める論客と激しく論戦を繰り広げてきたが、「日本、西側諸国は『自分がしないことは他もしないだろう』『損してまでしないだろう』と自分基準で考えるが、独裁国家は違う論理で動いており弱いと思ったら攻撃する。ウクライナも仲良くできると思っていたら、支配下に入ることを求められた。それを理解した方がいいし、いろんな観点から情報発信を継続すれば、しっかりした考えが広まると思う」と語った。
グレンコ氏の話通りなら、ロシアの攻撃は今後も続く。ロシアでは世界の自動車メーカーが撤退し車が不足しているが、日本からロシアへの中古車輸出は継続中。車両を戦地に送ったり、部品を装備に転用される可能性もあり、日本がロシアに加担する形になっているという。
「日本も自由民主主義国家としての自覚を持って、ウクライナの戦いは正義の戦いでロシアを勝たせてはいけない。できる範囲で、ウクライナに人道支援や医療や発電機といった物的支援を継続してほしい」と訴えた。
☆ぐれんこ・あんどりー 1987年11月6日、ウクライナ・キーウ生まれ。2010年から11年まで早稲田大学で語学留学。12年、キーウ大学日本語専攻卒業。13年より京都大学に留学し、19年3月に京都大学大学院人間・環境学研究科博士後期課程指導認定退学。現在は日本ウクライナ文化交流協会政治担当部長を務め、ウクライナ情勢や世界情勢について講演・執筆活動を行う。主な著書に「ロシアのウクライナ侵略で問われる日本の覚悟」など。








