柔道男子73キロ級で五輪2連覇の大野将平(30=旭化成)は、誰よりも強い覚悟で世界の猛者たちと戦ってきた。

 山口県出身で中学時代に上京後、数々の五輪メダリストを生み出した柔道私塾「講道学舎」で中高の6年間を過ごした。天理大進学後の2013年に世界選手権で初優勝。世界の舞台で頭角を現すと、16年リオデジャネイロ五輪、21年東京五輪で金メダルに輝いた。

 勝って当たり前の立場で王座を守り抜いてきた。モチベーションを維持することは簡単ではなかったが、天理大柔道部の穴井隆将監督が「人間は絶対浮き沈みあると思うが、常に結果が求められる立場ありながらも出ると決めた試合においては、必ず自分のピークを持っていく。不完全な自分というのをあまり表に出さない」と語るように、大事な舞台できっちり結果を残してきた。

 勝つためにやるべきことは全てやってきた。稽古中は穴井監督ですら近寄り難い空気を放っていた。新型コロナウイルス禍で満足に練習ができない時期には、00年シドニー五輪重量挙げ日本代表で天理大職員の菊妻康司氏と駐車場でトレーニングに励み、記録会に出られるほどの腕前にまで上達。「講道学舎」という弱肉強食の世界を生き延びてきたからこそ、自らの嗅覚で今の自分に必要なモノを取り入れ、成長につなげてきた。

 今後は全柔連関係者によると、第一線を退く意向を示した上で、日本オリンピック委員会(JOC)が実施する23年度のスポーツ指導者海外研修事業に申請。英国留学を希望しているという。気持ちが切れない限り、畳に上がり続けてきた大野。1つの目標を達成した今、新たなステージに足を踏み入れる決断を下した。