インスタント麺の「シリーズ」には各社、様々な狙いと思いが込められている。テレビなどでも活躍する愛好家の大山即席斎氏が、注目商品を解説してくれた。アレンジ術もお見逃しなく。

【日清「完全メシ」シリーズ】

日清の完全メシシリーズ
日清の完全メシシリーズ

 日清の創業者安藤百福は戦中戦後の貧しい時代の経験を通して、国民がしっかりと栄養を取れる社会をつくることに力を入れてきた。それを象徴するワードが「完全食」で、それさえ食べていれば健康で長生きできる食べ物のことだ。日清が1958年に発売した初代のチキンラーメンのパッケージにも「完全食」の文字が記されていた。その後も日清の取り組みは続き、完全食を志向した商品を何度か出しているが、通販限定とかで、世間一般が知るものではなかった。

 今回はテレビでCMを打つなどこれまで以上に意欲的。発売された2品を見てみよう。

 ◆豚辛ラ王 油そば
 パッケージの文言がやたらと多いがこれは熱意の表れとして受け取っておこう。

 手でもんだようによれた麺は、パスタに近いガッシリとしたかみ応えのあるシコシコ食感。粉末調味料、液体たれ、仕上げオイルを麺にかけて混ぜ合わせて出来上がり。しょうゆ系でポークのこってりとした旨みがあり、香辛料でピリッとした辛みがある油そばになる。

 ◆カレーメシ 欧風カレー
 お湯を入れて5分間待ち、カレー味の「完全謎パウダー」と仕上げオイルを入れて、とろみがつくまでかき混ぜたら出来上がり。ココアパウダー入りで暗い色をしたカレーはスパイスの風味が強めで香ばしい欧風カレーになる。ライスはやわらかすぎないモチモチ食感。

欧風カレーメシの中身
欧風カレーメシの中身

 

【日清「カップヌードル スーパー合体シリーズ」第2弾】

 この月イチ連載の初回でも取り上げた合体カップヌードルが今秋も登場した。

 前回の第1弾は「カップヌードル&しお」「シーフード&カレー」「欧風チーズカレー&チリトマト」「旨辛豚骨&みそ」。一方、今回は組み合わせが全変更されており、カレーとしおが抜けて、トムヤムクンと辛麺が入り、旨辛豚骨はにんにく豚骨となった。

「シーフード&カップヌードル」は人気トップ2による盤石の組み合わせ。まさに中間という作りで、かやく、スープも含めおおまかには元祖カップヌードルのライト版といった印象だ。

「チリトマト&トムヤムクン」はエスニックや辛い物好きが喜ぶマッチング。トムヤムクン感のほうがやや強い。

「欧風チーズカレー&みそ」は一見ミスマッチに思えるが、青森の「みそカレー牛乳ラーメン」というご当地ラーメンという実例がある。今作も味の調和が取れていた。

「辛麺&にんにく豚骨」は強い刺激を求める人向けの一品。つゆは強い辛さがあるため辛麺らしさが優勢で、「にんにく辛麺」といった印象だ。

 スーパー合体シリーズに似た試みは他社も始めていて、東洋水産では「赤い×黒いきつねカレーうどん」「緑の×黒いたぬきカレーそば」を出している。

 

【東洋水産「MARUCHAN QTTA コク味噌味」】

MARUCHAN QTTA コク味噌味
MARUCHAN QTTA コク味噌味

 マルちゃんのQTTAは東洋水産の意欲作だ。各社の縦型カップ麺は元祖のカップヌードルを模倣することで大きな市場を形成できた。なのでカップの形状はどれも似たりよったりだ。しかしQTTAでは形状の踏襲をやめ、上面は円形、下面は角の取れた正方形という東京スカイツリーのような凝った作りになっている。このカップはQTTA専用なので、もしも失敗するとせっかく作った意匠が無駄になってしまう。勝負作なのだ。

 故にCMは大物の松本人志を起用した。どの社もカップヌードルの盤石さに負けてなかなか定着する縦型カップ麺を出せない中、QTTAは個性派のサワークリームオニオン味などをきっかけにシリーズが定着してきた。2代目CMでは香川照之を起用して、もう一段階の飛躍を目指したが、あの問題によりPRが足踏み状態となっている。しかし商品のほうは着実に出ており、今回は正統派のみそ味が登場した。

 つゆはポークと野菜の旨みが出た粉末ベースながらコクがあるみそ味に仕上がっている。味は濃いめだがコテコテはしていないので、冬向きとはいえ、温暖な季節にも合っている。麺はコシ感のあるモチモチ食感。かやくはキャベツ、豚肉、コーン、ネギ。当シリーズは洋風ヌードルタイプが人気だが、こちらは王道の味わいになっている。

 

【今月のアレンジ術=しょうゆ味にしょうゆ/みそ味にみそを入れる】
 インスタント麺には粉末スープを使うものと、液体スープを使うものがある。先に出たのは前者で、後に出たのが後者。粉末から液体になった理由は味の再現性も大きな理由だが、香りが特に重要だ。以前も書いたが、おいしさのキーになるのは味よりも香りが大きいとされている。例えば複数のフルーツジュースを鼻をつまんで飲み比べると何味か分からなくなることが実験で検証されている。粉末の商品は香りのそれらしさに弱さがあるのだ。

 しかし以前マツコさんの番組に出たとき、マツコさんが「サッポロ一番みそラーメンのみそ味だか、しょうゆ味だかよく分からないところがいいのよ~」とおっしゃっていたように、すでにあの味と香りで人気を確立しているから手出しは無用にも思える。でも、袋麺は5食パックがデフォルトなので1食くらいは味変するのもよかろう。

味噌ラーメンに味噌を追加
味噌ラーメンに味噌を追加


 やり方はチョ~簡単。しょうゆラーメンにはしょうゆを小さじ半分ほど、みそラーメンにはみそを小さじ1杯ほど入れるだけ。香りを出すためなので出来上がったラーメンに、最後に入れるのがよい。

 5個200円程度で安売りされているスーパーのPB商品でこれをやるとまるで違った風味に仕上がる。

 ☆おおやま・そくせきさい インスタント麺愛好家。カップ麺、袋麺、ラーメン、焼そば、うどん、そば、まぜそばから海外製品まで、年間600食の即席麺を食べる。1995年、「TVチャンピオン インスタント麺通選手権」優勝。「マツコの知らない世界」出演。ツイッターは【@Sokusekisai】。