上方の林家に染太あり――。落語家の林家染太(46)が、落語会「第十回 林家染太独演会」(10月31日、天満天神繁昌亭)を開催する。演目は上方落語を代表する滑稽噺「寝床」と「時うどん」に加え、祖父との実話を基にした創作落語「命のたすき~いじめられっ子の僕とシベリア帰りのお爺ちゃん~」を披露する。ロシアのウクライナ侵攻が続く中、染太が落語に込めた思いを語った。
染太は2000年、4代目林家染丸に入門。若手落語家コンクールで優勝するなど活躍してきた。子供から大人まで楽しめる滑稽噺から涙を誘う人情噺、古典から創作落語まで幅広くこなし、英語落語を行う国際派でもある。
落語家の林家といえば、林家正蔵、「笑点」でレギュラーを務める林家木久扇や林家たい平が有名かもしれないが、染太は「『林家』っていうと、『あ、笑点の』と言われることもあるんですけど、上方の林家もウチの師匠をはじめ、素晴らしい先輩方がいらっしゃる。僕らが気合入れてアピールしていきたい。それが落語家にさせていただいた師匠への恩返しにもなる」と力を込める。
そんな染太が今回、祖父との実話に基づいた戦争をテーマにした創作落語を披露する。前半の「寝床」「時うどん」が上方落語の代表的な滑稽噺だけに振り幅が際立つ。
染太は小、中学生のころ、いじめられている友人をかばったことをきっかけに、自身がいじめられる立場になった。いじめは殴る蹴るの暴力を伴うもので、おじいちゃん子だった染太は祖父に「死にたい」と相談した。
祖父は「大変やったな。生きとったらええこともある」と言い、自らの戦争体験を披露。満州に出征し、自決寸前のところを戦友に「死んだらあかん。生きてたらええこともある」と止められ、シベリアでの厳しい抑留にも耐えて日本に帰ってきたと話し、染太に「今、お前がここにいてるのは、いろんな人が一生懸命頑張って生きてきた命のたすきが渡ってる。だから、死んだらあかん」と諭した。
実はこの創作落語、20年前には出来上がっていたという。テーマの重たさに加え、1時間弱の大ネタとあって、かける機会にもなかなか恵まれなかったが、ロシアのウクライナ侵攻が続くなか、「混沌とした世界情勢の中で、命が軽くみられている感じがするんです。日本もほんのちょっと前までは戦争を体験してて、今生きている人も、命のたすきが渡ってるという思いがあった。今しかないと思った」。
笑いを商売にする立場でもあり、自身がいじめられているということは他言したくない面もあったというが、「僕もいじめられてる時に心のよりどころが落語やったんです。落語を聴いてるときは、いじめられてることも忘れてゲラゲラ笑ってた。落語家になったのは、同じように苦しんでる人を笑顔にしたいというのもあった。ニュースでいじめを苦にした人が亡くなったというのを見て、『お前は当事者やったのに、何もせーへんのか』と自問自答して、落語家として向き合うのが義務だと感じた。いじめ問題をみんなで考えるきっかけになってほしい」と語った。












