正しい対処法は? フィギュアスケート男子で五輪2連覇を達成し、プロに転向した羽生結弦(27)の公式ユーチューブチャンネル「HANYU YUZURU」が開設から約2週間で登録者数が67万人を突破(21日現在)。一方で、切り取りなどの無断動画が横行している。そこで著作権法やエンターテインメント・メディア法に詳しい福井健策弁護士を直撃。問題点とファンが取るべき行動について聞いた。
羽生の動画は世界中から注目を集める一方で、人気に便乗した切り取り動画などの違法アップロードがまん延。ファンからは「何とかならないのか」「ダメなものはダメ」と非難の声が上がる中、福井弁護士は「ユーチューブなどからダウンロードして編集したものを再アップロードするのは、もちろん認められているわけではない。規約に反していることは間違いないし、何らかの著作権の侵害にあたる可能性がある」と指摘した。
では、どの点が著作権の侵害にあたるのか。福井弁護士は①振り付けの権利②スケーターである羽生の権利③映像の権利と、3つの視点から分析した。
「①についてはある程度独創的な振り付けの構成が映像に含まれている場合には、著作権の侵害にあたる可能性がある。②は著作隣接権という歌手やダンサーに与えられる権利で、芸能的な性質を持つかどうかで変わってくる。③は映像の著作権で、編集などの工夫がなされているものは、映像自体が著作物になる可能性が高い」
全ての無断動画が①~③を侵害するとは限らないものの、切り取り動画がユーチューブの規約違反であることは事実。羽生側は削除の要請や責任追及を行える可能性が高いという。
他にも、収益を目的に切り取り動画を使ったチャンネルを運営している場合は、パブリシティー権(肖像権の一種)の侵害にあたるケースもある。「例えば勝手に〝羽生結弦チャンネル〟を立ち上げて、羽生さんの映像を使い、アクセスを集めてもうける可能性は十分にある。羽生さんを研究するための真面目なチャンネルなどは別として、ただ単に羽生さんの映像を集めて収入を得るのは違法となり得ます」との見方を示した。
ただ、法律に抵触するのは覚悟で無断アップロードをする人たちが後を絶たない。だからこそ、ファンに向けて「純粋なファン動画はともかく、海賊版のような動画に関しての最善策は見ないこと。見ればその動画の順位が上がり、羽生さんの公式チャンネルの再生数が減ってしまう恐れもある。スケーターを支えられておらず、結果的に苦しめることにもつながってしまうかもしれない」と呼び掛けた。