クイックコマースの現在地とは――。コロナ禍で我々の生活がいや応なしに変わったが、流通ウォッチャーの渡辺広明氏(55)は「暮らしを変える便利さが猛スピードで近づいてきています」と指摘する。取材を進めると万国共通の現象の中にも日本ならではの“便利さ”が見えてきた。
注文してから10~30分で配達するクイックコマース(以下Qコマース)が注目を集めている。
今年1月にはZホールディングス傘下のヤフー、アスクル、出前館の3社が食料品や日用品を最短15分で届けるQコマース「Yahoo!マートbyASKUL」を展開することを発表。今月19日にはユーザーが直接買い物できる来店型店舗の運営も始めたことが報じられた。
「コロナ禍でフードデリバリーが大きく伸長したことが現在のQコマースの競争激化の下地になっています。まず、フードデリバリーを利用して配送の便利さに気づいた消費者が増えたこと。そして事業者側は配送網を次のビジネスチャンスへ変えようとしています。楽天グループも4月にUber Eats Japanとの提携を発表しました。状況としては電子決済『○○ペイ』が乱立した2018~19年ごろに似ているかもしれません」(渡辺広明氏)
Qコマースの特長は何よりも即配性にある。3~5キロ圏の配送エリアごとにコンビニやスーパーなど小売店と提携し、オンラインで商品を販売するモデルのほか、配送専門の拠点「ダークストア」を構えるモデルに大別される。
「Uber Eats」「出前館」「Wolt」「menu」といったプラットフォームと“全方位外交”で組んで45都道府県3300店超でデリバリーサービスを導入しているローソンの担当者に実際に何が売れているか聞いてみると…。
「導入当初からよく売れているのはからあげクン。実は想定通りです。特にデリバリー専用商品の『からあげクンレギュラー&レッドBOX』(20個、1180円)は注文を受けてから揚げることが多く、お客様から『揚げたてでさらにおいしい』と好評をいただき好循環を生んでいます」(事業開発部長の吉田泰治氏)
それでも、新型コロナの第7波によって自宅療養者が増える中で、デリバリーサービスの注文内容に大きな変化があったという。
「のど飴や冷却シート、栄養ドリンクなどが感染者拡大前と比べて300%以上の伸長。ご注文から数十分で届くという利点が、急な発熱でお困りの方や自宅療養など外出できない方々が熱さましや栄養補給のためにご利用いただいたと考えています」
あらゆるプレーヤーが参戦するQコマース市場でカギとなる商品は何なのだろうか?
「現状では夜22~23時でも注文が入っていますし、同一チェーンで3キロ商圏を埋めきれるのはコンビニしかないのではないかと思っています。加えてからあげクンのように中食に力を入れてきたことが強みであると考えています」
実を言うとZホールディングス率いる「Yahoo!マートbyASKUL」も今後、店内調理した中食需要に対応する意図を明かしているが、渡辺氏はQコマース市場の行方をこう占っている。
「Qコマースの需要が伸びるのは万国共通。それでも日本においては中食に対してコンビニが圧倒的な答えを出し続けてきたのが実情だと思うし、他業種による追随は容易ではないはず。そもそも日本人の便利さのデフォルトをコンビニが担ってきた。そう考えると、日本のQコマース市場の中心になるのはコンビニだと思う」
渡辺氏の先見の明に従えば、現在はベンチャー企業が割拠するQコマース市場もどこかのタイミングで落ち着くのかもしれない。
体験したことのない人にとっては想像もしえない快適さをもたらす購入体験がもうそこまで迫っている。
☆わたなべ・ひろあき 1967年生まれ。静岡県浜松市出身。「やらまいかマーケティング」代表取締役社長。大学卒業後、ローソンに22年間勤務。店長を経て、コンビニバイヤーとしてさまざまな商品カテゴリーを担当し、約760品の商品開発にも携わる。フジテレビ「LiveNewsα」レギュラーコメンテーター。












