あの言葉が球界に、巨人に響いたのだろうか。ニュースに触れ、ふと思い出した。
巨人・田中俊太内野手(27)が18日、FA権を行使して巨人入りした梶谷隆幸外野手(32)の人的補償として、DeNAに移籍することが両球団から発表された。
異例の早さだ。14日に梶谷、井納のFA宣言選手契約締結合意が公示されたばかり。巨人・大塚副代表編成本部長は28名のプロテクトリストについて「(選定は)難しいですけど近日中に出します」と語っていたが、わずか4日での〝スピード決着〟となった。
記者の脳裏に浮かんだのは1年前の〝提言〟。田中にとって巨人の先輩でもある、広島・長野久義外野手(36)の言葉を覚えているファンはいるだろうか。
「これは今だからこそ、僕が言うべきことだと思いまして」
昨年12月12日の契約更改後、長野はいつになく真剣な口調で、本紙にメッセージを託した。テーマはFA補強に伴う人的補償制度について。球界を揺るがした衝撃移籍の当事者が、広島1年目のシーズンを終えた節目で口を開いたのだ。
「今後の補償に選ばれる選手のためにも、通達のタイミングをもう少し早めてもらえたら。(FA合意の公示を起点に)40日以内というのは少し長すぎますよね。できれば年をまたがず、年内には決まるようなシステムになればいいなと」
長野がこうして声を上げたのは、人的補償制度そのものではなく、その規定に対して。丸の移籍合意が公示されたのは、2018年12月11日だった。
「僕の場合、正式に決まったのがアメリカに滞在中の日本時間1月7日。最初は『帰ってきてくれ』と言われたのですが、球団の厚意で向こうにとどまることを許してもらいました。でも若い選手の場合はそうはいかないケースも出てくるでしょう。トレーニング施設やホテル、練習相手の手配などをキャンセルして、帰国の航空券を手配したりするのは負担になります。おそらく練習どころではなくなる選手も出てくるでしょう。この制度で移籍する選手の立場について、もっと真剣に考えてもらえたら」
長野があの日ほど真顔で主張したのは、後にも先にも初めて。前に出ることを嫌う男が意を決して言葉を発したのは、今後の補償に選ばれる選手の身を真剣に案じてのことだった。
田中俊は球団を通じ、関係者、ファンへの感謝とともに「ジャイアンツで学んだことを生かして、新天地の横浜DeNAベイスターズでも勝利に貢献できるよう、精いっぱい頑張ります」とコメントを寄せた。(堀江祥天)












