ロシアのプーチン大統領は24日、ウクライナに対する軍事作戦の実施を表明し、ついにロシア軍が武力侵攻した。これを受けてバイデン米大統領をはじめ世界各国の首脳らがロシアを非難する声明を発表。一方で常軌を逸した武力による現状変更を選択したプーチン氏には、最近の“激変ぶり”を指摘する声も上がっている。 
 武力による現状変更など断じて許されない――。しかし、ロシア軍は首都キエフなど各地の軍事施設をミサイルで空爆。ウクライナ当局などによると、ベラルーシとの北部国境と、ロシアが実効支配する南部クリミア半島との境界の施設が攻撃を受け、地上部隊が侵入した。

 ロシアのタス通信によると、ウクライナのリャシュコ保健相は24日、ロシアの攻撃でウクライナ人57人が死亡し、169人が負傷したと述べた。国連機関の推計では、約10万人が家を追われた。日米欧は一斉に非難。ウクライナ政府は全土に戒厳令を出した。

 ロシアにとって最後の“障壁”である旧ソ連の一部だったウクライナのNATO(北大西洋条約機構)加盟を何としても防ぎたいプーチン氏が、この要求を米欧に受け入れられなかったことで強硬措置に出た格好だ。

 プーチン氏は「ウクライナ政権によって8年間も虐げられ、大量虐殺されてきた人々の保護が目的」とし、さらに「ウクライナを占領する計画はない」としているが、それもロシア側の都合のいい建前と言えるだろう。

 それにしても、ここまで前近代的な行為にプーチン氏を走らせるものは何なのか? 元警視庁公安部出身で旧KGBなど独自のネットワークでロシア事情に詳しい北芝健氏はこう話す。

「プーチン氏は3年ほど前からカフェインを過剰摂取するようになり、性格が変わったといわれる。カフェインは男性ホルモンのひとつであるテストステロンを濃縮する効果があるが、恒常的に過剰摂取すると攻撃性が高まることで知られる。これによって元来持つ冷徹で攻撃的な部分が暴発し、ウクライナ侵攻に至った可能性は否定できない」

 通常、男性は加齢とともに男性ホルモン値が低下するが、カフェインの過剰摂取により、ソ連時代にKGB諜報員として暗躍したかつての姿がよみがえったということなのか――。

 ただ、実際にプーチン氏の周辺に異変が起こっていることは確かだ。

 7日にプーチン氏と会談した仏マクロン大統領の側近が、プーチン氏について「3年前とはまるで別人だった」と証言したことが報じられた。また、全ロシア将校協会の会長で、宇宙人の存在を認めたことでも著名なレオニード・イワショフ退役大将が、ウクライナ侵攻の中止とプーチン氏の辞任を要求していたことが明らかになっている。プーチン氏の専制国家ともいわれるロシアにあって、退役将校とはいえ反旗を翻すのは異例中の異例だ。

 さらにロシアがウクライナ東部のルガンスク州とドネツク州を一方的に独立国家として承認するため招集した国家安全保障会議で、プーチン氏は承認決議の回答をためらう幹部に対してイラ立ちを隠さず恫喝に近い形で一喝。世界中に配信され、プーチン氏の独裁であることを皮肉にも知らしめる結果となった。

“変貌”したプーチン氏がこの先に見据えるものは何なのか?

「目先の目標は旧ソ連時代にNATOに対抗するためにあったワルシャワ条約機構の再構築です。最終目標は永世皇帝として現在の東欧の衛星国を含む旧ソ連圏を統治下に収めることと言われている。ワルシャワ条約機構の再構築はともかく、旧ソ連圏を統治下に収めるなど夢物語と思われているが…」(北芝氏)

 バイデン大統領は24日の演説で、プーチン氏を「侵略者」と呼び、「ソ連を再建したいと思っている」と指摘した。ロシアがウクライナを越えて侵攻する可能性があることも認めた。追加制裁も明らかにし、プーチン氏への世界の怒りは強まるばかりだ。