絶滅した生物として有名な「ニホンオオカミ」だが、いまだに生存説は根強い。そこには我が国の生物としてロマンがあるが、実際に目撃証言があり、存在そのものがミステリーとなっている。

 1905年、明治時代に奈良県で捕獲された個体が最後のニホンオオカミの生息情報で、こちらは標本として現存している。そして環境省によって「過去50年間生存の確認がなされない」として絶滅種になっている。

 2003年には「1910年の福井城址にあった農業試験場で撲殺されたイヌ科の動物がニホンオオカミであった」との論文が発表された。しかし、記述のみなので実在したのか確証が取れていない。

 2014年の11月26日、埼玉県秩父市の鍾乳洞から、ニホンオオカミと思われる歯一本が見つかった、と各ニュース媒体で報じられた。

 秩父市では1996年にもニホンオオカミに非常に酷似したオオカミの姿が写真に収められている。この写真、専門家による鑑定でもニホンオオカミの特徴が見られるという意見が多いそうだ。

 このミステリアスな存在を「神獣」などと持ち上げる向きもある。実際に日本ではニホンオオカミを含むオオカミは「お犬様」「大口の真神(まかみ)」と言われ、信仰の対象にもなっていた。

 秩父市には三峯神社があり、そこでもニホンオオカミを「神の使者」としてまつってきた。オオカミ信仰の深い地域なのである。

 信仰があるというのは決して迷信のようなものだけでなく、その地にその生物が生存し、住人に親しみがあったという可能性が高い。

 絶滅したと言われた後もニホンオオカミによく似たオオカミの目撃証言、遠ぼえを聞いたという話は広く伝わっており、個人や団体を含めた多くの人々が調査を行っている。東京都青梅市、紀伊半島、四国などにも目撃の証言が残っているという話もある。

 残念なことに捕獲には至っておらず、見間違いも多く、生存説の確証には至っていない。正確な資料がないために生態に不明な点が多いニホンオオカミだが、秩父市での歯の発見が手がかりになるだろう。