【氷上の絶対王者を大解剖(2)】日本フィギュア界のエースが〝神々の加護〟を受けそうだ。北京五輪に臨むフィギュアスケート男子の羽生結弦(27=ANA)は、94年ぶりの五輪3連覇と史上初のクワッドアクセル(4回転半ジャンプ)の成功に熱視線が注がれている。ファンは全国にある羽生ゆかりの神社へ〝聖地巡礼〟を行い、必勝を祈願。本紙は快進撃を支えてくれる神様たちを大公開する。

 長野・長野市にある「長田神社」はファンもよく知るパワースポットだ。2014年ソチ五輪前、羽生は知人を介して同神社のお守りを受け取り、初の金メダルを獲得。以来、節目の試合では必ずお守りを身につけているため、ファンの間でも「聖地」となった。

 心を込めて一つずつお守りを作製する湯本正通宮司は「勝負には運も必要。だから彼は運も強く信じているのです」と言い、羽生が自信を失いかけた15年グランプリファイナル(バルセロナ)では「長田神社のご神木の神様が『大丈夫』って言う声が聞こえた」と不思議なパワーを感じて優勝した逸話もある。3連覇へ向け、湯本宮司は「自分を信じれば大丈夫。いまや世界の羽生選手なので、もうお守りは必要ないでしょう」と静かに健闘を祈っている。

 羽生の地元・宮城県では「秋保神社」(仙台市)と「羽生天神社」(大郷町)が有名。秋保神社は「勝負の神」として知られ、羽生をはじめ多くのアスリートが参拝に訪れる。18年平昌五輪で連覇を達成した際には「祝・羽生結弦君 金メダルおめでとう」と書かれた垂れ幕が飾られた。羽生天神社は名前が入ったことで人気となり、祈祷を受ける人も多数。祝詞(のりと)を上げた際に涙を流す人もいるという。岡公市宮司は「コロナ禍になってからグループの代表者が参拝に来て、みんなのお守りをまとめて買われます。羽生さんのファンは結束が強いですね」と話している。

 関西では「弓弦羽(ゆづるは)神社」(兵庫・神戸市)が名高く、聖地としては最も歴史が古い。名前になじみが深いという理由で、中学生時代の羽生にファンらがお守りを贈り、その存在を知った本人も11年7月に参拝した。連覇した平昌大会前にも訪れており、絵馬に記入した「世界のトップになれますように…」を実現させた。また淡路島にある「諭鶴羽(ゆづるは)神社)」も同じ読み方との縁で遠方から訪れる人は多いそうだ。

 また、羽生のプログラムにちなんだ「晴明神社」(京都市)や「五方山 熊野神社」(東京・葛飾区)も注目される。平昌大会のフリーで演じた「SEIMEI」は、平安時代の安倍晴明を描いた映画「陰陽師」「陰陽師Ⅱ」の劇中曲。その安倍晴明がまつられた晴明神社には当時ファンが殺到し、晴明ゆかりの熊野神社も参拝客は倍以上に膨れ上がったという。

 羽生が足をケガした際には「足の神様」がまつられる神社が支える。21年11月に右足首負傷したときには服部天神宮(大阪・豊中市)にケガの早期回復を祈るファンが殺到。「足立山妙見宮」として知られる「御祖神社」(福岡・北九州市)の磐梨文孝宮司は「足(健脚)の神様として信仰が厚く、これまで多くの方々が願掛けされております」とし、絵馬とわらじを供えて願掛けする「健脚祈願」の作法が伝統的。「昨年より羽生選手の足の回復祈願として奉納されていくファンの方が増えています」。神社には羽生へのメッセージが記された絵馬が多数掲げられている。

 最近では、クワッドアクセルの成功にちなんで「飛行神社」(京都・八幡市)を訪れるファンも多い。

 名前、プログラム、足、ジャンプ…と羽生に関連する全国各地の〝幸運の神様〟は今回も大願をサポート。3連覇&人類初の4回転半ジャンプ成功へこれ以上の援軍はないはずだ。