話題の“9頭身モデルボクサー”の世界初挑戦はタオル投入で幕を閉じた。WBO女子世界スーパーフライ級タイトルマッチ(11日、東京・後楽園ホール)で高野人母美(28=協栄)は王者ダニエラ・ベルムデス(26=アルゼンチン)に4回1分26秒でKO負け。この1年、主戦場としたスーパーバンタム級から2階級落としての世界挑戦にあたり“仰天減量法”も取り入れたが…結果につなげることはできず。世界の舞台で壮絶に散った美女ボクサーの舞台裏と今後に迫った。

 王者の連打を食らって、最後は右ストレートに尻から崩れ落ちた。この時点で高野の目はうつろ。おぼつかない足取りで立ち上がりはしたものの、試合続行が危険なのは誰の目にも明らか。ファイティングポーズをとろうとしたタイミングでタオル投入となった。

 2013年4月のプロデビューから10戦目で迎えた世界初挑戦は、厚い壁にあっけなくハネ返された。高野は「ダウンした時のこともシミュレーションしていたけど、練習とは全然違って力が入らなかった。負けることは全く考えてなかったので今は頭がキーンとしていて、真っ白です」。会見では敗因を聞かれても意味が理解できず「はい、いん?」と隣の金平桂一郎会長(50)に聞くほど混乱した様子だった。

 金平会長は「敗因は絶対的な実力差というよりも経験値の差」と分析したが、ほぼ初めてとなる大減量の問題も大きかった。

 この1年はスーパーバンタム級が主戦場。6月には東洋太平洋女子王座も獲得した。だが、今回の世界初挑戦はスーパーフライ級。リミットは約55・3キロから約52・1キロに下がり、トータルで約11キロに増えた減量を克服する必要があった。

 そこで、10月の和歌山・新宮キャンプから取り組んだのが“頻尿減量法”だ。とにかく水を飲んで、排尿の回数を増やすというやり方。高野によれば「毎日水を6リットル飲んでいます。そうすることでトイレの回数がすごく増えますけど、体がそのリズムを覚えると、減量で水分を取らなくなってもおしっこに行くようになるんです」。

 とはいえ、減量が終盤にさしかかると、口にできる水分は「グレープフルーツを搾ったものを少し」「氷を一つずつ、なめる」「氷水でうがいする」といった状態にまでなった。こうなると普通はツバも汗も尿も出ず、何もしぼり出すことができなくなった。

 どうにか過酷な減量をクリアし臨んだが、やはり「世界」は甘くない。1回の中盤には、王者が何もしていなかったにもかかわらず、バックステップで足がもつれ尻もち。「スリップ」の判定でダウンをとられなかったが、直後の打ち合いでは胸に入れてあったお守りが吹っ飛んだ。それでも確実に手を出して、3人のジャッジのうち2人が高野のポイントに。このままいけば…と思わせたが、2回後半から動きが明らかに遅くなり、3、4回になると防戦一方で、ベルムデスの猛打の前になすすべなかった。過酷な減量が影響したと見られても仕方がない。

 ただ、キャリア最大の大一番で完敗。テレビCMに出演するなどモデル、タレントとしても売れっ子だけに、今後はどうするのか? 試合後の高野は「まずは休みたいです」と明言を避けたものの、金平会長は「決めるのは本人次第」としながら「このままやめるのは、もったいない。すごく節制して、普通の選手が1年かけてやることを3~4か月でやった。この試合の結果がどうのこうのというより『高野人母美』というボクサーがもったいない」と現役続行を促した。

 実際、試合前に高野は「負けたら、どうする?」との本紙の単刀直入な質問に「負けることは一切考えないし、やめませんよ」と断言している。この日は強敵相手にプロ10戦のベストバウトといえる大健闘だっただけに、まずは心身ともに疲れを癒やして、再挑戦の機会をうかがうことになりそうだ。