全国高校サッカー選手権大会は記念すべき第100大会を迎えた。同大会を長年にわたって中継してきた日本テレビの元スポーツ局次長で、Jリーグ東京Vの社長も務めた坂田信久氏(80)は、試合中継で敗者に焦点を当てる戦略に取り組んだ。その方針は阿久悠さん(故人)作詞の大会テーマ曲にも反映された。


【高校サッカー100年の舞台裏(4)】坂田氏は決勝だけを放送していた選手権の中継権をNHKから〝強奪〟すると、高校サッカーの開催地を関西から首都圏(東京、千葉、埼玉、神奈川)へと移転。甲子園に対抗し「決勝は国立競技場」を定着させるなど、大勢の観客が訪れる「お正月の風物詩」と呼ばれるように尽力した。

 大会を首都圏に移すことになり、選手権の中継にも工夫を凝らした。坂田氏は「試合をすれば勝者と敗者が出るんだけども、敗者に注目しようとね。当初は勝者がより引き立つためにとか言ってカメラマンをはじめ、みんなにも協力してもらったんだけど、僕はかねて敗者にスポットを当てるべきと思っていた。彼らは負けたら、そこで終わりでしょ。そこを見てほしかった」と振り返る。

 実際に、選手権は負けたチームに焦点を当てる機会が多い。ロッカーで泣き崩れる選手たち。これまでの努力をたたえる監督など、そこには多くのドラマが詰まっていた。坂田氏は「試合後のロッカールームにカメラが入ってね。高校サッカーでしか見られないシーンが撮れた。それは本当に美しい姿なんだよ。反響は本当に、すごく大きかったね」。

 このスタンスは大会テーマ曲の製作にも深くかかわった。坂田氏は「日テレでテーマソングをつくることになり、作詞を阿久悠さんにお願いすることになった。そうしたら1度だけど『話を聞きたい』って言われてね。そこで敗者の美学じゃないけど、負けたチームにスポットを当てているという話をしたら『1校以外はみんな負けますからね』っておっしゃってね。そうしたら、あの曲ができた」という。

 それが第55回大会(1976年度)から現在まで大会のテーマソングとして使用されている「振り向くな君は美しい」だ。「さすが阿久さんだと思ったね。こんなに長く愛される曲になったんだから。これまでにテーマソングを変えたいと思った若いテレビマンもいたと思うけど、この曲よりもいいものであれば…。まあ、今まで引き継がれているのうれしいね」と話していた。