【カザフスタン・アスタナ25日発】柔道の世界選手権2日目、女子52キロ級で中村美里(26=三井住友海上)が2009、11年大会に続く3度目の金メダルに輝いた。決勝で、昨年2位のアンドレア・キトゥ(27=ルーマニア)に優勢勝ち。今大会の日本勢金メダル1号となった。3大会連続の五輪出場を大きく引き寄せたベテランは2度にわたる悪夢のような“恥辱”を乗り越え、確かな成長の跡を刻んでみせた。
女王が鮮やかに復活した。1回戦から3試合連続一本勝ちで勢いに乗った中村は、決勝でも積極果敢に攻めた。世界ランキング1位のキトゥに指導を与え、日本に男女通じて今大会初の金メダルをもたらした。「世界選手権で優勝したという実感はなく、全体的に楽しめた。以前と比べて新しい気持ちで戦えた」。勝因を分析した中村は、飛び切りの笑顔で歓喜に浸った。
北京五輪銅メダリストはロンドン五輪で「ダントツの優勝候補」「金メダル確実」と言われた。しかし、結果は期待を裏切るまさかの初戦敗退。その後に左ヒザを手術し、どん底からの再出発だった。
一つの転機となったのはリハビリ期間。中村は柔道以外のスポーツを観戦するなど、積極的に視野を広げた。畳に戻ってからは、がむしゃらな柔道を改め、随所でベテランの円熟味を光らせた。試合時間が5分から4分に短縮され、指導が早くなった新ルールに対応し「組み手のスピードを上げ、技出しを早くする」とポイントを絞って技術を磨いた。
さらにメンタル面は、柔道関係者が口を揃えて驚く強靱さを示した。昨年9月のアジア大会団体戦決勝の韓国戦で、中村は送り襟絞めで落とされて失神負け。世界チャンピオン、五輪メダリストが試合で絞め落とされて意識を失うことは異例中の異例。日本は優勝したものの、中村は醜態をさらし、衝撃を与えた。
“悲劇”はこれで終わらない。帰国後の12月に行われたグランドスラム東京大会準決勝で今度は橋本優貴(26=コマツ)に同じ技を仕掛けられ、またも落とされてしまう。中村のピクリともしない無残な姿に、会場は静まり返った。
もちろん、落ちたことは「参った」せず粘った結果とも言えるが、2度の“恥辱試合”でトップ選手のプライドはズタズタに切り裂かれた。それでも、中村は立ち上がった。全日本柔道連盟の北田典子理事(49=ソウル五輪61キロ級銅メダル)は「精神的な部分で、トップ選手が大舞台で2回連続で絞め落とされるのはかなり苦痛。若い選手だったら(選手生命が)厳しくなっていた。経験があるから(乗り)越えられる」と目を細める。
実際、今大会の中村は何があっても動じることはない堂々たる戦いぶりだった。準決勝のエリカ・ミランダ(28=ブラジル)戦では残り1秒、技ありを奪って逆転した。窮地になっても慌てず、焦らず、勝負を諦めない姿勢はまさに職人の域。4月から所属の主将を務め、責任感も芽生えた。
混戦模様のリオ五輪代表争いも、頭一つ抜け出した。北田氏は「かなり大きい。(代表に)王手をかけたことになる」との見方を示す。3度目の五輪へ、一気に開けた視界。日の丸を見上げた中村は「ここでの優勝は来年の五輪につながる。『表彰台の一番上はいいな』と思った」と、早くも1年後の“再現”を誓った。
☆なかむら・みさと=1989年4月28日生まれ。東京都出身。東京・渋谷教育渋谷高では1年時から活躍し“ポスト谷亮子”として期待された。2008年北京五輪銅メダル。世界選手権は09年金、10年銀、11年金メダルを獲得した。12年ロンドン五輪は初戦敗退。14年アジア大会(韓国・仁川)優勝。全日本選抜体重別選手権は今年が5度目の優勝だった。世界ランキング18位。得意は小外刈り。158センチ。
【柔道世界選手権】金メダル!中村美里“恥辱試合”乗り越えた女王
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