【緊急連載「和製横綱の引き際」第2回】もう一つの“頂点”に立つ日は来るのか――。大相撲初場所5日目の17日、元横綱稀勢の里(32)が東京・両国国技館を訪れ、現役引退と年寄「荒磯」襲名のあいさつ回りを行った。第2の相撲人生の新たな一歩を踏み出した元稀勢の里の荒磯親方は、どのような道を歩んでいくのか、緊急連載「和製横綱の引き際」第2回では、親方としての「今後」とその価値を探った。
現役引退から一夜明けたこの日、荒磯親方は午後1時過ぎに着物姿で国技館を訪れた。日本相撲協会の役員室のほか、巡業部や審判部、チケット売り場など各部署をあいさつに回った。
前日16日の涙の引退会見から一転、穏やかな表情で関係者と談笑したり、ファンからの記念写真の求めに応じる場面も。横綱の重圧から解放された安堵感を漂わせた。土俵を去った実感は「なかなか湧かない。まだスーツも持っていないし」と戸惑いを口にしたものの、第2の人生を歩み始めた元和製横綱は「これからまた新しいスタート。一歩一歩進んでいきたい」と話し、気持ちを新たにした。
近日中には、所属の田子ノ浦部屋で親方として“初指導”も行う予定だ。「近いうちには。まわしを締める? もちろんです。大関(高安)もいますし、三番稽古をやれるように体をつくらないと」と意欲を見せた。前日の会見では「ケガに強い力士を育てていきたい」とも語っていた。左上腕の大ケガで志半ばで土俵を去った苦い経験が念頭にあることは間違いない。
日本相撲協会の八角理事長(55=元横綱北勝海)も「ケガで苦しんだ人は自分の経験を後進の指導に生かせる」と話す。将来的には田子ノ浦部屋からの独立も視野に入れる元横綱の手腕が注目される。
さらに今後は親方として相撲協会の運営に携わることも重要な仕事となる。最初は新米親方として花道の警備に当たるのが慣例。一方で横綱経験者の荒磯親方は、すでに親方の序列では「年寄」や「主任」よりも上に位置する「委員待遇」の立場で、将来の幹部候補生でもあるのだ。
親方になるためには現役を引退した時点で「日本国籍を有する者」の条件を満たす必要があるが、外国出身力士の隆盛が長く続いた影響もあり、元横綱の親方は減少の一途。元貴乃花親方の花田光司氏(46)も昨年10月に退職した。50歳以下で日本出身の横綱経験者の親方は元稀勢の里しかいない。大関以下でも理事長になれないわけではないが、最後は現役時代の番付がモノをいう世界だ。
角界内では「いずれは稀勢の里が理事長候補になることは間違いない」(二所ノ関一門の関係者)と今から目されている。“未来の理事長候補”と言われ改革を旗印にした花田氏は志半ばで協会を去ったが、今後の親方としての努力次第では現役時代とは別の形で角界の“頂点”にまで上り詰める可能性があるのだ。
いずれにせよ「元横綱稀勢の里理事長」の誕生は、少なくとも10年以上は先の話になるが…。その間に荒磯親方はどれだけの実績を残せるか。元和製横綱は新たな“勝負”に臨む。(明日に続く)












