世界のナオミが〝山〟を動かした。テニスの4大大会・全米オープン(30日開幕、ニューヨーク)を主催する全米テニス協会(USTA)は24日(日本時間25日)に選手のメンタルヘルスをサポートする新たな取り組みを発表。出場選手は専門家のカウンセリングを受けられ「クワイエットルーム(静音室)」も利用できる。このきっかけをつくったのが、世界ランキング3位の大坂なおみ(23=日清食品)だ。女王は世界のスポーツ界に大きな変革をもたらそうとしている。
今回、USTAが打ち立てた新機軸は「メンタルヘルス・イニシアチブ」。最高責任者のマイク・ダウズ氏は「選手が最高のレベルで競うために必要なリソースを提供するために、具体的な措置を講じていく」と話しており、大会に出場する全ての選手と関係者の精神的な健康を守るため、包括的な医療サービスのプログラムが構築された。
出場選手や関係者は、希望すれば誰もが専門家によるカウンセリングを受けられるほか、施設内に設置された「クワイエットルーム(静音室)」も利用可能。大会の医療体制を指揮するアレクシス・コルビン医師は「先導的な役割を果たせることを誇りに思う」と語っている。この革新的なプログラムは大坂の問題提起が一因となった。
5月の全仏オープンで選手のメンタルヘルスが無視されていると不満を抱いた大坂は会見を拒否。大会を棄権して「メディアに向けて話す前は大きな不安が押し寄せます」として〝うつ状態〟であることも告白した。これが起点となってアスリートのメンタルヘルス問題は他競技でもクローズアップ。東京五輪では体操女子の金メダル候補だったシモーン・バイルス(米国)が団体総合決勝で「心の健康」を理由に途中棄権し、大坂からメッセージを送られたことも明らかになった。
一連の流れを受けて、国際体操連盟の渡辺守成会長は「大坂もシモーンも問題提起してくれた勇気に感謝しています」と称賛。さらに国際競技連盟(IF)のトップとして「東京五輪ではコロナ対策やSNSからくるアスリートへのプレッシャーは史上最大だった。これらのプレッシャーから選手だけでなく審判員も守り、メンタル状態を正常に維持できる環境を整えるのもIFの役割となる。大変なことだが、時代や環境の変化に合わせてスポーツ界も変わっていかざるを得ない」との見解を語った。
大坂が一石を投じたことで、スポーツ界に大きな変革の波が起きつつあることは確か。全米オープンでプレーに専念しやすい環境が整うことは、連覇を目指す女王にとっても〝追い風〟となりそうだ。












