【テニス】ブリスベン国際 大坂なおみ準決敗退もフィセッテ新コーチの凄テクの瞬間

2020年01月12日 16時30分

 女子テニス世界ランキング4位の大坂なおみ(22=日清食品)が連覇を狙う4大大会第1戦の全豪オープン(20日開幕)を前に上々の手応えだ。前哨戦のブリスベン国際(オーストラリア)は準決勝(11日)で同2位カロリナ・プリスコバ(27=チェコ)に激闘の末に敗れたものの、新コーチのウィム・フィセッテ氏(39=ベルギー)によるメンタルコーチングがズバリ的中。同氏はデータ派と言われるも、激情的な女性を懐柔する手腕はかつての“あのコーチ”に匹敵するようで…。

 大坂の卓越したフィジカルはもはや文句のつけようがないが、いまだに指摘されるのがメンタル面だ。試合中のイライラ、ラケット投げは頻繁に見られ、劣勢になると明らかに表情に出てしまう。

 だが新コーチを擁する今大会は少し違う。2時間48分の大激戦となった準決勝のプリスコバ戦は敗戦後も晴れやか。フルセットの末に7―6(12―10)、6―7(3―7)、2―6と逆転負けを食らったが、試合後は「第1、2セットは4大大会の決勝のような戦いで良かった。今日も多くのことを学べた」と収穫すら口にした。

 充実の裏にあるのがフィセッテ新コーチの手腕だ。本紙は同コーチ就任時に「激情型の女子選手を上手に操る“じゃじゃ馬ならし”」と報じたが、その象徴的シーンが準決勝で見られた。第2セットを奪われ、ファイナルセットで1―2とリードを許すと、フィセッテ氏はコートへ下りた。だが、ベンチでうなだれる大坂はなんと頭からタオルをすっぽりとかぶって完全シャットアウトのポーズを取ったのだ。会話拒否――。ピリピリしたムードとなったが、フィセッテ氏はまるでグズる子をあやすように優しい言葉をかけた。

「どうする? 話したい? 聞きたい?」

 次の瞬間、大坂は「聞きたい…」と言ってタオルから顔を出し、水を口に含んで素直にフィセッテ氏の言葉に耳を傾けたのだ。

 このシーンをDAZNテニス中継の解説者・佐藤武文氏(48)は「さすが百戦錬磨のコーチ。ああいう状況では一方的に話さず、まず大坂選手に主導権を握らせる。戦術の話ではなく、気持ちをアップさせることを言ったのも見事でした」と分析する。フィセッテ氏はその後も「本当の大坂なおみを見せつけよう!」と前向きな言葉をかけ続け、大坂の表情は一変。敗れはしたが、良好な精神状態を取り戻したのは間違いなかった。

 ここで思い出されるのが大坂の元コーチ、サーシャ・バイン氏(35)だ。かねてメンタル面が課題だった大坂に優しく寄り添い、技術以上に精神力向上に力を入れて4大大会初制覇に導いた。昨年2月に不可解な契約解除で突然の別れとなったが、フィセッテ氏こそ大坂にとって最適な“サーシャ型”のコーチだったのだ。

 同氏は就任当初から「データ重視」「理論派」と言われ、大坂は敬意を込めて「プロフェッサー(教授)」と呼んでいる。だが不器用な女性の心の支えとなる姿は、教え子にとって「教官!」の呼び名のほうがふさわしいのではないか。大坂に心強い“メンタルコーチ”が誕生したことは、全豪オープンを前に明るいニュースと言える。