大相撲の横綱日馬富士(33=伊勢ヶ浜)が10月の秋巡業中に幕内貴ノ岩(27=貴乃花)に暴行を加えた問題で17日、新たな疑惑が発覚した。加害者の日馬富士が東京・両国国技館で鳥取県警による任意の事情聴取を受けるなか、九州場所を休場している被害者の貴ノ岩になんと“仮病疑惑”が急浮上。師匠の貴乃花親方(45=元横綱)の責任問題に発展する可能性も出てきた。先行きが全く見通せず、事態は混迷を深めるばかりだ。

 日本相撲協会は17日、貴ノ岩が協会に提出した診断書について、作成した病院の医師から診断根拠などのヒアリングを実施したところ、新たな事実が判明した。

 診断書には「(1)脳振とう(2)左前頭部裂傷(3)右外耳道炎(4)右中頭蓋底骨折、髄液漏の疑い」で「全治2週間」と記されていた。これについて、協会側の聞き取りに対する病院の医師による説明の要約は以下の通り。

(4)の頭蓋底骨折と髄液漏れは、ともに「疑い」である。精密検査で骨折線とも考えられる線が確認されたが、過去の衝撃が原因で生じた可能性もあり、今回の傷害と因果関係も分からない。また、実際に髄液が漏れたという事実はない。いずれにせよ「全治2週間」というのは貴ノ岩が負傷した10月26日から11月8日までの2週間という意味だ。

 11月9日の時点で相撲を取ることを含め仕事に支障がないと判断し、退院とした。貴ノ岩の病状についても、現状は問題がないという認識で「当病院としても、重傷であるように報道されていることに驚いている」。病院の認識が相撲を取ることに「支障がない」にもかかわらず、貴ノ岩が九州場所を休場したことは不可解極まりない。

 貴乃花親方は九州場所2日目の13日、貴ノ岩の休場の理由について「診断書に書いてある通りです。本人も体調が悪い」と話していた。今になって改めて振り返ると、貴ノ岩の体のどこの部分が「書いてある通り」だったのか。見方によっては、貴ノ岩サイドによる診断書の“悪用”や“仮病”とも受け取られかねないのだ。

 日馬富士の暴行問題が発覚した直後から、被害者側の貴乃花親方の対応には協会内部から疑問の声が投げかけられていた。一つは暴行発生から3日後の10月29日に協会に無断で被害届を提出したこと。そのうえで、11月3日に行われた協会による事情聴取に貴乃花親方が「分からない」と答えたことも不信感を増幅させた。

 貴乃花親方はれっきとした日本相撲協会の理事であり、巡業部長としての監督責任や報告義務を負っている。そして、新たに浮上した貴ノ岩の“仮病疑惑”。今回の問題は加害者である日馬富士に責任があることは間違いないが、貴乃花親方の一連の不可解な対応が角界内の混乱に拍車をかけていることも確かだ。

 親方衆からは「日馬富士に対する処分はもちろんだが、貴乃花親方の責任問題にもなる」との声も上がっている。貴乃花親方が被害届を出した裏には、昨年の理事選で対立した八角理事長(54=元横綱北勝海)率いる現執行部への不信感があるとの見立てもあるなか(本紙既報)、“ブーメラン現象”ととれなくもない。今回の新疑惑について、貴乃花親方はどのような説明をするのか。今後の動向に注目が集まる。