シブコの「覚悟」に太鼓判だ。女子ゴルフの渋野日向子(23=サントリー)が、3日に開幕する米ツアー「HSBC女子世界選手権」(シンガポール・セントーサGC)でいよいよツアーメンバーデビューを果たす。2019年「AIG全英女子オープン」優勝で世界に衝撃を与えた渋野は、再び世界最高峰の舞台でインパクトを残せるのか。女子プロ事情にも詳しい芹沢信雄(62=TSI)がルーキーシーズンを占った。

 渋野は海外メジャーに勝った自分を捨てて昨年からスイング改造に着手。しかし、昨年前半は結果が伴わない時期が続いた。そのためゴルフ界でも否定的な意見も少なくなかった中、あきらめることなく新たな理想を追求し続けた。すると昨年10月に復活を印象付ける国内ツアー2勝を挙げ、計8ラウンドの長丁場となった同12月の米ツアー最終予選会も、より多くの試合出場が望める20位以内を確保した。

 つらい時期を乗り越えて米ツアーメンバーをつかんだ道のりを芹沢は高く評価する。「心配した時期はありましたけど、自分の意志を貫き通したのはよかったですね。あのクラスの選手になると、周りの声とかもいろいろ聞こえてくるし、やり通すのは難しいだけに、意志はかなり強いと感じます。それに今の完成度を見ると、相当練習してきたと思いますよ」。渋野の代名詞である笑顔の裏に隠された〝貫徹力〟に舌を巻いた。

 とはいえ、まだスタートラインに立ったにすぎない。真価が問われるのはこれからとなる。「やっぱり環境に慣れることが大事。スポットで行っているからわかっているだろうけど、米国は移動が大変ですから。彼女なら大丈夫だろうけど、周りに惑わされずに自分のゴルフをやり切れるかも大事になるでしょう」とポイントを挙げた。その上で「(米ツアーで)十分に戦えると思います。何度か優勝争いに加わってくる試合の中で、そのチャンスをモノにしてほしいですね」と大きな期待を寄せた。

 活躍を予感したのは技術面だけでなく、米ツアーへの挑戦意欲が半端ないからだという。「米国は軽い気持ちで行ってもダメ。日本でやっているときと何から何まで違う環境だし、根性を決めないと成功できません。その点、渋野さんは新型コロナウイルスの影響で予選会の受験が1年延期となっても、やり通したところに覚悟があると思いましたね。スイング改造のこともそうだけど、とことんやり抜く性格なのでしょう」

 ただ、米ツアーの実情を踏まえて、ちょっとした懸念はある。予選会経由の選手は大会での優先順位は決して高くない。「最初はギャラリーが少ない早い時間などの組に回されることもあるだろうし、テンションが上がらない中でプレーしなければならないかもしれません。プロは見られて力を発揮することもありますから」。特に渋野はギャラリーの声援を力に変えるタイプだけに、なおさらだ。

 もちろん活躍すれば、〝主役待遇〟となるだけに、今後に向けてはデビュー戦からのスタートダッシュも重要となりそうだ。

 芹沢は渋野と米ツアー同期となった古江彩佳(21=富士通)にも可能性を感じている。昨年12月の最終予選会では渋野の20位を上回る7位で突破。ひと足早くツアーデビューを果たした中、「崩れないゴルフをするタイプだと思います。ほかの選手に比べて飛距離はないけど、ショートゲームやショットの正確性は抜群。(宮里)藍ちゃんみたいな活躍をしてもおかしくないですよね」と高評価だ。

 それだけに「皆さんは渋野さんに注目されているでしょうけど、古江さんのほうがいい成績を残すかもしれません」と期待した。