【取材の裏側 現場ノート】コカ・コーラを見る度思い出す話がある。1997年、日本の女子バレーボール代表がゆとりがあるハーフパンツを着用して国際試合に臨んだ。国内リーグでもいわゆるブルマが敬遠され始めていたころだ。しかし来日していた当時の国際バレーボール連盟(FIVB)ルーベン・アコスタ会長は、オカンムリ。「バスケットボールじゃないんだ、ブルマに戻せ」。圧倒的な権力の持ち主だった同会長の発言は、すぐに通った。

 なんであんなものをはかないといけないのか。自分の嫌な思い出も重なり、アコスタ会長に「どうしてそこまでこだわるのか」と直撃した。すると「君ね、キューバ選手を見てごらん。コカ・コーラシェイプだよ。あのカッコよさがないと」。選手の身体を、なめらかな凹凸のあるコカ・コーラの瓶にたとえ、女性の体にフィットしたユニホームを着た格好良さがバレーボールの人気向上には欠かせないと力説されてしまった。今考えると、恐ろしい時代だ。

 あれから20年以上が経過した。コカ・コーラの瓶がなかなかお目にかからなくなったように、スポーツ選手のユニホームも大きな変化を遂げている。バレーボール選手はショートパンツ型が主流に。ビーチバレーでもビキニが絶対ではなくなったし、女性選手を性的に見られることへの抗議の意味も込め、ドイツの体操女子選手は東京五輪で足首まで覆われた「ユニタード」を着用した。嫌なものを着なくてもいいし、何が格好良くて心地よいかを、本人が決めていい時代の到来を歓迎したい。

(一般スポーツ担当 中村亜希子)